「見ごたえあった」ふがいない僕は空を見た 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
見ごたえあった
大変力のこもった作品で、出演者や作者の意気込みが伝わるし、印象的な場面やカットが多く充実した作品だった。しかし、出産や性について、前向きなメッセージがほとんど感じられなかった。生きているのが辛くてしかたがない、好きで産まれて来たわけではない、といった思いが丁寧に描かれていて、そういう作品なのだろうけど、自分とは意見が合わないと感じた。
アニヲタの田畑智子は見事な脱ぎっぷりで気合を感じさせる一方で、本当にアニメが好きでどうしようもないというような幸福と不幸と背中合わせで、しかし情熱たっぷりといったヲタらしさは全くなかった。そんなヲタばかりではないという意見もあるだろうけど、あまりに情熱が希薄でヲタを簡単に遊び道具にしている感じがした。
そして子供を本当に望んでいる登場人物が、田畑智子の義母や頭のおかしい妊婦だけだった。子供を本当に愛しく思いたい、家族が増える喜びに希望を抱いている登場人物が皆無なのはとても残念に思った。そこは大前提とした上で、様々な問題を描いてこそなのではないだろうか。
不幸で寂しい人の群像劇で、げんなりした。しかし、友達の流出画像をコピーして学校に撒き、それでいて彼の事を大事に思っているという描写はひどく矛盾たっぷりで、心が苦しくなる感じがすごくよかった。
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