「いい意味で「生きる」事に意味なんてないと思わせてくれる作品」ふがいない僕は空を見た いしこさんの映画レビュー(感想・評価)
いい意味で「生きる」事に意味なんてないと思わせてくれる作品
あらすじだけ読んで、純粋に恋愛映画なのかなと思ってたらとんでもなかった。コスプレ趣味の主婦がただ不倫(しかも高校生と)してる映画なんかじゃなく、この世で生きていく事の残酷さや貧困について深く考えさせられる作品だった。
どんなに望んでも子供ができない人、そもそも子供を望んでない人、自分の子供に子供を産ませたいと強く望む親、逆に簡単に子供ができちゃっても何も考えてない人、そんな親から生まれた子供、生きづらさを抱えた人などなど…さまざまなキャラクターを通して、ただただ生きる事にフォーカスした中に様々なメッセージがあった。
一度この世に生まれてしまったら、もうあとはとにかく生きていくしかないという残酷な現実を、団地のある小さな町の中で淡々と表現していく。
親の貧困が子供の貧困に連鎖し、闇深いその団地から何とか出たいともがき苦しむ子供の苦悩を窪田くん演じる福田を通して伝わってくる様はとても痛々しく、自然と涙が溢れた。
一番印象に残ったのは、永山瑛人君演じる卓巳のお母さんからの弁当を最初は受け取らずに捨てていたけど、いよいよギリギリの生活が続いてチロルチョコしか食べるものがなくなり、祖母の粗相も重なって精神的にも肉体的にも追い詰められた時に外に届いていたお弁当を見つけて、無心で頬張る姿をみた時。
これは今まで心の中にあった小さなプライドが0になり、生きる事への執着が芽生えたことが強く伝わった瞬間に思えた。
それと、三浦君演じる田岡が言っていた「俺は本当にとんでもない奴だから、それ以外のところはとんでもなくいい奴にならないとダメなんだ」という一節もとても印象に残った。
軽い気持ちで見始めたけど、とても考えさせられるいい作品だった。