「そんな人生、最高。」グッモーエビアン! ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
そんな人生、最高。
タイトルのカタカナ表記を見た時から、これナニ?だった。
よ~く見てみたら、Good Morning, Everyone!のことだった。
うわ、ふっざけてやがる~!と思ったのもつかの間、
まず冒頭の一句にやられる。。すごく胸に響く言葉である。
ではその言葉が、この物語のテーマなのかと思うところだが…
自由気ままに生きる放浪の父親(本当の、ではない)ヤグ。
ヤグに寛大でロックが信条の、仕事に明けくれる母・アキ。
そんな両親の元ですくすくと育った(今までの)中学生・ハツキ。
ハツキの家庭に憧れを抱く親友・トモちゃん。
大まかなメンバーはたったこれだけの、名古屋発・家族ドラマ。
正直、大泉洋は「水曜どうでしょう」からのイメージが強すぎて、
今までのどのドラマも映画も(あの探偵映画も)う~ん^^;だった。
俳優としては巧いのだろうが、キャラが強すぎて笑いに繋がる。
彼の個性をどう巧く封じ込める(演技者として)かがポイントだと
今までずっと思ってきたのだが、今作ではしっかり彼が活きた!
うざくていい加減でどうしようもない父親ながら、
誰よりも娘を可愛がり(とはいえ放浪してたけどね)彼らの為に
せっせと料理を作ってはご近所との連帯をも結ぶ。
何処へ行っても、誰と逢っても、まず好かれる男なのである。
役得^^;とはこれなのか、と思うが、他の3人についても適材適所。
アキ役の麻生久美子は妊娠当時で相当具合が悪かったらしいが、
周囲に(監督以外)それを洩らさず、夜中の撮影もこなしたという。
こういうプロ意識が、ああいう演技表情をもたらしたのはさすが。
ハツキ役の三吉彩花には、何度も泣かされた。
最も多感な時期の女の子の心情を巧みに顕わし、ひねくれたり、
素直になってみたり、やたらしっかり者のところを鮮やかにこなす。
親友・トモちゃん役の能年玲奈との絡みには、泣かされっぱなし。
二人とも可愛い顔しておいて演技が巧い。
家族って何だろうの前に、親友って何だろう、とも考えさせられる。
おフザケとクールの間に絶妙にマッチするロックのスピリッツ。
普通の家庭に生まれ育ち、平凡な道を突き進めば幸せな人生か?
親が我が子にこうあるべき。と諭す将来とは、本当に正しいのか?
ハツキの担任がアキを訪問した時、この後アキがなんて言うのかと
心待ちにしていたら、なんと「そんな人生は、、、つまらん!」ときた。
あはは^^;そうきたかと苦笑する反面、私も同じ考えだなと思った。
まさか中学生で仕事しろなんて言わない。学校へ行くなとも言わない。
が、分かりきった思想を他人に諭され見下される筋合いなどない。
アキの暮らしぶり、学校への協力・理解が為されていないことを
担任は家庭に問題があるから。と(無言で)アキに訴えているわけだ。
(ヤグがのれんの陰で、どうしようオレ?って顔してるのが良かった)
いや、先生という職業も大変だな、とは思う。
職業柄正しい道へ生徒を導くことが彼らの信条なのだから仕方ない。
17歳で子供を産み(その前に相手とは別れている?)その自由奔放の
ツケが、今こうして親の責任問題としてアキに降るのも当然の結果。
なのでアキは担任に噛みつきはしない。しかし考えを曲げもしない。
(ロックだねぇ)
その後、ハツキを前にヤグの過去と自分の本心を吐露するアキだが、
ここでもあまりに正直で(辛い言い回しをするが)好感が持てた。
ホント、誰があんな痛い思いをしてまで産んだ子供を…って思うよ。
それはどの母親も子供に対して心から思っている本心だもん。
狭い世界で小さな一家族が織りなす地域ドラマながら、
それぞれの心情の掘り下げが見事で、後味スッキリ、彼らには彼らの
生き方があり幸せがある。子供にとって一番の幸せって何だろうと
考えた時、父母が仲良く談笑し、その中心に子供のいる姿が浮かぶ。
ウザい親だろうが、情けない親だろうが、大切なものを見落とさない
生き方は、必ず子供にも伝わっている。それって肝心だよね、ヤグ?
観終えてみたら、ここ一番の邦画の快作。年末に観れて良かった!
実は自分の母親が愛知県出身で(名古屋じゃないけど)、
所々で聞き覚えのある方言にはかなり笑えた。特にあのオバさん^^;
(ヤグカレー次回のどうでしょうで是非作って!フランべもしてねー!)