裏切りのサーカスのレビュー・感想・評価
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サーカスに潜むもぐらは鋳掛け屋?仕立屋?兵隊?貧乏人?
いやー、難しかった!ここまで難しい映画は久し振り。
老スパイが英国諜報部“サーカス”に潜り込んだ二重スパイ“もぐら”を突き止めるストーリーなんだけど…
それぞれコードネームを持ち、誰と誰が繋がって…と、登場人物の相関関係が複雑。
現在の“もぐら”探しが過去のブダペスト事件と関与しており、交錯しながら進み…と、構成も複雑。
張られた伏線どころか登場人物たちも細かく洞察しなくてはいけない。
DVDで難しい映画を見る時、日本語吹き替えにして字幕も出して、万全の二重体制で見るんだけど、それでも難しい。
でも、上質な映画である事には間違いない。
複雑だが知的なストーリー、トーマス・アルフレッドソンの抑えた演出、冷戦時代の荒涼とした空気を捉えた映像美、ゲーリー・オールドマンら英国名優の静かな名演…これを味わえただけでも見た価値はあった。難しかったけど。
ジャンル的にはスパイ映画。
スパイ映画と言うとジェー○ズ・ボ○ド やイー○ン・ハ○トのような派手なアクション映画が真っ先に思い浮かぶ。
いつもそれらの映画を見ながら思っていた事だが、本当のスパイの世界はそんな派手で格好いい世界ではないだろう。
人知れず暗躍し、裏切られ殺され、そしていとも簡単に切り捨てられる。
信じられる者も信じれるものも無く、相手の腹を探り合う、頭脳戦と心理戦。
仲間はもちろん家族すら欺き、愛さえ偽り利用する。
孤独と孤立だけが常に身に寄り添う。
そんなスパイのリアルの世界を、まるで第三者の視点からのように淡々と冷徹に描き、虚しさを誘う。
…と、書いていたらまたこの映画に挑戦したくなって来た。
もう一度見よう。
静かなるスパイ
いわゆる「スパイもの」ではあるが、銃撃戦などの激しいアクションシーンは一切ない。それなのにこの映画はどんなシーンにも恐るべき緊張感がある。
この映画の雰囲気に大きく貢献しているのは俳優達の名演だろう。まずはゲイリー・オールドマン。普段みたいなキ○ガイの役とは正反対の、滅多なことでは感情を表に出さない、最高に渋い老スパイを演じている。口を開くこともさほど多くないのに、一見してやり手のスパイであることが誰にでも分かる。他とは一線を画す圧倒的な存在感だ。サーカスの幹部を演じるメンバー達も素晴らしい。それぞれが自分の持ち味を出し、誰一人として忘れられない登場人物に仕上がっている。そして彼らの部下であるスパイ達。その多くが葛藤を持ち合わせていて、ある意味で最も共感できる役だろう。
「スパイもの」だから脚本の出来は秀逸だ。「もぐら」を見つけ出すまでの過程を過去と現在を交差させながらドラマチックに仕上げている。ただスタイリッシュさを求め、極力台詞を廃し、多くを俳優の表情に頼っているせいでストーリーに整合性がついていない箇所もある。
しかしそんな欠点には目をつぶってでもこの映画を見る価値はある。冷戦時代の暗い影が忍び寄るスパイの情報戦は見物だ。是非とも原作も読んでみたい。
(2012年5月27日鑑賞)
静かで渋い作品でした
軍拡競争の様相を呈した東西冷戦さなかの、情報局最高幹部の二重スパイ疑惑。
プロ同士の攻防は緊張の中で、不要な熱を持つことなく静かに展開、渋い作品でした。
フィクサーの名前も取り沙汰されるし少々混乱しますが、個性的な渋い顔が並び、人物を見誤る事はなかったです。乾いた世界を生きる彼らの私的な感情にハッとさせられます。
情報局のパーティーはシュールな歌にスパイ達の微妙な笑顔、見ようによってはとてもブラックな状況で印象的でした。
温和そうでいて老獪なスパイ・スマイリーを演じたゲイリー・オールドマンはお見事でした。
ピーター・ギラム青年を演じたベネディクト・カンバーバッチも、若々しくて良かったです。
みんな、憐れな道化。
『ぼくのエリ 200歳の少女』で注目されたT・アルフレッドソン監督の最新作。
正直、頭が疲れている時にはオススメできない映画かな……。
この物語の構造を一度観て理解できた人はかなりの強者だろう。
チェッカー模様のように交錯する複雑な人間関係も去ることながら、
くるくると入れ替わる時系列、
登場人物らの表情の微妙なニュアンス、
台詞に含まれる仄めかしを敏感に読み取り、
挙げ句は小道具や衣装にまで注意を払わなければ、
物語を完全に理解する事は難しい。
そう偉そうに語る僕自身、未だにピンと来てない点がワラワラと(爆)。
僕は時すでに遅しだったが、未見の方はパンフを先に買い、
人物相関図だけでも読んでおく事をオススメ。
だが映像・演技ともに非常に質が高い映画である事は十分理解できる。
G・オールドマンを筆頭に、出演陣はみな抑制の効いた見事な演技。
物語のテンポも、これだけ複雑な構成でありながら、精密機械さながらに制御されている。
あと近日公開の『ダークナイト・ライジング』の前に
オールドマンとT・ハーディの共演を観られるのも良い(笑)。
(ハーディは『お前誰だよッ!』てくらいの豹変ぶりだけど)
それに……この物語を観た後に残ったのは、
ある種の物悲しさだった。
英国諜報部“サーカス”に潜むソ連の二重スパイ(もぐら)は誰か——
その真相から見えてくるのは、彼ら諜報部員たちが抱える、惨めなほどに悲しい心。
友情も、愛情も、全ては相手を欺く為のただの道具。
そんな非情な活動を長く続ける内、
敵と味方の境界線も、虚と実の境界線も消えて無くなり、
自分への忠義が国への忠義に取って代わり、
遂には自分自身がただの“紛い物”と化してしまう。
みんな、憐れな道化。
泣きたくなるほどに滑稽な道化。
人間、生き残る為には敵を潰さねばならない。
そして、敵を潰すには非情にならねばならない。
だが、心の底まで一点の滲みも無いほどに非情になってしまったら、
その存在は果たして“人間”と呼べるのだろうか?
映画の最後で描かれた裏切り者の末路。
彼が最後に流した赤い涙に、じわりと目頭が熱くなった。
あんな形であれ、彼に涙を流させた作り手の優しさに。
この映画に興味を持つまで知らなかったが、
原作者ジョン・ル・カレは実際に英国諜報部MI-6に所属してたとか。
……彼が辞めた理由も少しは理解できる気がする。
<2012/7/7鑑賞>
ダブルクロス
いやぁ、複雑ですね。複雑。
スパイスリラーてジャンルなんですか?頭フル回転で観賞しましたよ。
観賞前に劇場で貰った人物相関図読み込まないと全くのお手上げだったと思います。
最近も原作本買ってボチボチ読み始めてたんですが、ペース上がんなくてw
これじゃあ、いつ観に行けるか分かんないってんで原作予習は諦めて劇場に向かった訳です。
んー、すっごい地味ですよね?全く以って華美な映画じゃないしそんな世界じゃない。
けども、ま実際の諜報合戦てのはこんな味気ないものなんでしょうけどね。
スパイが目立ってどうすんのよ、ていう。007みたいにアクロバティックな技能求められる訳ないでしょうしね実際問題。
ゲイリー・オールドマン扮する諜報機関を解雇された男が、ひたすら二重スパイの正体を追求していく。謎を明らかにしていく、ていうお話。
これが淡々としつつも混線の極みを見せるんですね。
二重スパイ容疑の候補は4人。
ティンカー?テイラー?ソルジャー?プアマン?
真実はいつも一つ!的な犯人探しで済めばいいんだけども、これがもう真実が一つ明らかになる毎に「あれ?え?じゃ真相は?」ていう。
トリッキーですよぉ本当に。ストーリー追い掛けるので精一杯でしたし。
そんで、どっと疲れましたw観る人選びますわ、これw
んで、観ててちょっと気になったことがあってですね。
二重スパイってダブルクロスとも云いますよね?
ダブルクロスって、ほら、鉄道の両渡り線?分岐器の意味もあるじゃないですか。
映画で正に、その分岐器の画が出てきて「あ、この演出凄い」てなって。
つまりはそういう細かい伏線がテンコ盛りなんですよ。そういうの好きな人には堪らない仕様ですよ。
物語の緻密さを楽しみたい方にはかなりオススメです。
ただ邦題が・・・。
俳優陣の顔が皆、素晴らしい。個人的にゲイリー・オールドマンが主演男優賞かも。音楽、衣装、美術も細部まで単なる時代感に留まらない。これがリアルなスパイ映画なのでしょう。ただ邦題が…。公式HPで予習をお忘れなく。★4.0 http://coco.to/4034
見応えアリ!
予めレビューを拝読し、公式サイトで相関図をアタマに叩き込み鑑賞
久々に見応えのある良い作品だ。無駄なシーンなど無い、一瞬たりとも目が離せない、いったい誰が『もぐら』なのか!?まったく読めない展開
登場人物、特にサーカスと呼ばれる諜報部員の4人は名前と暗号の二通りの呼び方があるので、やはり顔と名前くらいは予習していく必要があります。
全体に落ち着いた色彩だからこそ赤、青、黄の色が印象に残る。メガネフレームの色の違いで現在と過去を区別してもいる。
ゲイリー・オールドマン演じるスマイリーが考えるシーン、シグナルが青から赤に変わり、レールが切り替わるカット、これぞ映画が走り出す瞬間!
そこから大団円へ向かう。『もぐら』がわかった後も“なるほど”と納得の展開だった。他のエンタメ系のスパイ映画も楽しいが、本作のような地に足が着いた大人のスパイ映画もかなりのものです。難しい映画なので、誰にでもという訳にはいきませんか、最近の映画は噛み応えがないなぁと感じている方に、ぜひ映画館で観ることをオススメします。予習を忘れずに。
無常感が凄まじい
登場人物の顔を覚えるのがとても苦手なので、誰が誰だか分からないままで、時系列も勝手に勘違いしてしまい薄ぼんやりとしか理解できなかったのだが、それでも結末に流れる音楽と映像の無常感が凄まじくて鳥肌が立った。
美術や映像の具合が大変すばらしく1974年に撮影されたかのように錯覚するほどだった。また、全体に大変な高級感があり、格安チケットで見たのが申し訳ない気分になった。
あんまり理解できなくてもスクリーンで見てなんだか得した気分になる映画だった。ぜひもう一度きちんと理解しながら、なんだったらガイドブック片手に見てみたい。
難解な「スパイ映画」と見せかけて、実は「男」と「男」の情念の映画
1970年代初頭。イギリスの諜報機関「サーカス」の中軸に潜むソ連の二重スパイ「もぐら」をあぶり出す、それが作戦失敗の責任を取らされて引退した元諜報部員、ジョージ・スマイリー(ゲーリー・オールドマン)に課せられた任務だった。
この映画には、ほぼ同時代のショーン・コネリーの演じた、世界一有名な諜報部員を主人公にしたそれとは全く正反対に、プレーボーイ・スパイも、派手なアクションも、ない。ただあるのは、ひとのこころの裏側に潜む情念。
東西対立が明確に、歴然と存在した時代背景を考えれば、己の理念と理想を貫くため、二重スパイに堕ちていった、というのも判らなくはない、結局のところ、それらを阻むのは、彼らの間にふつふつと沸き起こる「男」同志の愛情、情念だった。
「J・エドガー」を観てもわかるけれど、ある種、緊張感が常に持続し、ひと時も休むことを許されていない組織の中では、同性同志の愛情が生まれやすいのか、どうか。異性よりも心を許しやすいのかもしれない。主人公の老いたスマイリーにはそういう感情はないけれど、妻との関係は冷え切っており、彼女の彼の同僚との不倫関係を知っているため、人生に疲れきっている。
印象的な場面は、直接的な描写を避けて、セリフもなく、音楽と、各々の表情だけで、それぞれの感情を淡々と表現しているのが、素晴らしい。特に末端の工作員(トム・ハーディ)が、ロシア女性と人知れず出会う場面での、コンパクト、鏡の使い方は非常にエロティックだ。
ラスト、二重スパイが発覚し、ただ死を待つ男と、その愛の標的になり、かつ彼に裏切られて死の淵まで追い詰められた男が、対峙する。互いの情念が複雑に絡み合うこの場面は、フリオ・イグレシアスの「La Mer」が伴奏にながれて、これでもかというぐらい、切ない。
冒頭のブタペストの街中、英国諜報員が銃撃される場面、諜報機関の幹部が政府高官と会う場面、音の使い方が効果的。スマイリーが推理を働かせて、二重スパイである「もぐら」の正体を導き出すのを、彼のアジト近くにある鉄道操車場の鉄路ポイントが切り替わるのとダブらせている場面、「もぐら」誘き出して待ち伏せする場面でのサスペンスの盛り上げ方は、古典的だけれども、緊張感は充分に感じられる。
もともと原作が難解だし、それをもとにしたこの映画も決して解りやすい作品ではない。現在進行形と過去進行形が入り組んでいて、現在流行の時系列を無視した映画的リズムとなっていることが、話の筋の理解を難しくしている。
それでもこの映画に魅せられるのは、雲が垂れ込めたロンドンを、スマイリーらを乗せて疾走する「シトロエンDS」と、ポール・スミスが衣装デザインを担当したスーツケースを着た諜報員たちと、スクリーンに映し出される色調(撮影はホイテ・ヴァン・テホイマ、クリスチャン・ベイル主演「ファイター」の撮影監督でもある)が、1970年代初めを見事に再現しているからかもしれない。
ネットで顔と名前を予習してから観に行くことを薦める
スマイリーのゲイリー・オールドマンがいい。
最初、金縁眼鏡で登場し、上司のコントロールとともにサーカスを追われるように去る。無口で冴えない印象を受ける。
やがて政府高官レイコンから極秘に特命を受け、二重スパイ〈もぐら〉の捜査に乗り出すスマイリーがまずやったのはメガネの新調だ。太い黒縁の眼鏡の奥から見つめる目は意志の強さを感じさせる。抑えた静かな物言いも、言葉は明確で妥協を許さない。
現在と回顧シーンの区別も、眼鏡のフレームの違いに注意すれば区別がつく。
徐々に〈もぐら〉を追い詰めていく過程が緻密で張り詰めたものがあり面白いが、人物相関が頭の中で組み上げられないと、かなり難解なストーリーだ。
たぶん、もう一度観たくなるだろう。
話の組み立て自体は丁寧に段階を踏んでいて、「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督の演出により一段ずつ階段を昇るように謎が紐解かれていく。それでも、登場人物の把握に追われてしまって話に着いていけなくなることがあるのだ。
ストーリーに没頭できるよう、事前に登場人物の名前と顔をさらっておくといいだろう。観終わってわかるが、どの人物も重要だ。それぞれにいい役者を配している。
翻訳(字幕)も難しいところだろうが、もう少し解釈しやすくする工夫がほしいところだ。たぶん、観るのが2回目だったら今のままでいいのだろう。きっと説明過多でくどくなるに違いない。字幕をつける作業は単なる翻訳ではないだけに、今作のように複雑なストーリーでは、そのさじ加減が大変だと思う。
徒労感のある内容に対し、どこかほのぼのとしたエンディングは、気持ちよく劇場をあとにすることができる。
もう少しひねりが欲しかった
ほぼ同時期に公開の『Black & White/ブラック&ホワイト』もスパイモノですが、今日の『裏切りのサーカス』もスパイモノ。ですがテイストは全く違っていて、『Black & White/ブラック&ホワイト』はお馬鹿ムービーですが、『裏切りのサーカス』は重厚なエスピオナージになっています。それもそのはず、原作がスパイ小説の大家ジョン・ル・カレ。そりゃぁ、重厚な内容にもなりますよね。
ただ、その重厚さが話を分かり難くしている事もあります。二重スパイを炙り出す物語と言えば、二重三重に物語が絡みあい分かり難くなるものですが、これもその例外ではありません。ただ、二重三重に物語が絡みあうところで、一体誰が信用できるのかが分からなくと言う要素が多くの場合はあるんですが、この作品の場合、誰を信用すれば良いのか?と言う価値観の所は、あまりどんでん返しになったりはしませんでしたね。その意味では、あまりにも淡々と物語が進んでいってしまうのでドキドキ感が足りないかな。
“もぐら”の正体が判明し、スマイリーが、その“もぐら”から女と、男宛てに手紙を預かるんですが、やっぱりその手紙に最後のシーンを依頼する内容が書かれていたんですかね?今はどうか知りませんが、イギリスのエスタブリッシュメント層では、アラン・チューリングみたいに少なからず同性愛者が居たりしますからねぇ。
さて、イギリスMI6の長官が“C”と称されるのは有名な話ですが、この物語中では“C”は“Control”と呼ばれていましたね。実際のところは“C”が何を意味するかについて諸説あるんですが、一般的には初代長官の名前から来ているという事なんですけどね。“C”をフォネティックコードで読んでいるんだとしたら、普通は”Charlie”で、“Control”にはなりません。どういう事なんですかね?
ところで、この物語って実際の事件が下敷きになっているようですが、その実際の事件ってやっぱりキム・フィルビーにまつわる、ケンブリッジ・ファイブの話なんですかね?
脚本が伏線を処理し切れていなくても、卓越した演出力で納得させられてしまう作品。
冒頭のコントール(スパイチームのリーダー)の極秘命令を受けた工作員ジムが、ハンガリーに潜入し、幹部の誰が「もぐら」(ソ連の二重スパイ)であるのか情報を持っている重要人物を確保するシーンから、素晴らしい緊迫感へ、一気にスパイの世界に引き込まれました。
けれども、この失敗でコントールは退任後、病院で入院中に暗殺。コントロールの右腕だったスマイリーも、もぐらの存在すら知らされず、道連れで退任させられて、以降の展開は、枝筋を並べすぎて、伏線を収束しきれずにラストにもつれ込んでしまいます。特にラストの展開は、余りに急で、突然「もぐら」が誰か急浮上するので、あれれと混乱しました。上映会場で人物関係図などが配られると思いますので、入念に登場人物とその役柄について充分予習しておかれるとより楽しめると思います。
こう書くと駄作のように読み取れるでしょうけれどトーマス監督は、驚異の演出力を発揮して、脚本に難のあるストーリーを最後までミステリックに仕上げました。
ちょっとストーリーは消化不良なりながらも、描かれていく映像の雰囲気で最後まで何が起こるのかついつい画面に釘付けにさせる演出力はただ者ではありません。予告編の出来が秀逸なので、過剰な期待感で上映に臨んでしまうのが本作の問題。そこそこの期待で、意外さを感じる方が楽しめると思います。
原作ものは、2時間の尺にまとめるのがとても困難なことです。本作では、なるべく原作に忠実であろうとエピソードを生真面目に拾っていったのが徒となりました。
だいたい肝心なもぐら候補につけられた“ソルジャー”などコードネームの命名理由は解説されず。スマイリーの妻アンが、同僚のビルに寝取られる不倫関係も中途半端でなくともいいぐらい。スマイリーのもぐら狩りチームで、情報係となるピーターは、自国の情報機関から首になるのを覚悟で、書庫から様々な情報を盗み出すものの、もぐら捜査に
活かされているところが描かれていません。
さらに死亡したことにされた工作員ジムのその後の消息の描かれ方も説明不十分でした。
トドメは、「二度目、真実が見える」と言うコピー。人を期待させといて、あの終わり方は語るほどのような複雑さは、全く感じなかったのです。もう少し「もぐら」を推定するまでのスマイリーの推理の過程を見せて欲しかったです。
他にも突っ込みどころは満載ですが、それでも凡作とは言いがたいスパイ映画として卓越した映像を楽しませてくれます。寡黙なゲイリー・オールドマンの存在感はたっぷり。007とはちがって、一見、目立たないしスパイらしくないのに、正念場では凄腕を見せるメリハリのある演技でした。往年の必殺シリーズ中村主水のように。
先ずは予告編だけ見て、一度目は欺かれましょう(^^ゞ
果たして、「二度目、真実が見える」となるのかどうか!
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