「芳一」アーティスト たろっぺさんの映画レビュー(感想・評価)
芳一
物語は主人公であるジョージが主演を務めるスパイ映画の1シーンから始まる。
敵に捉えられた彼が、拷問されながらも「絶対に喋るものか!」と拒否する事で、サイレントであるから主人公が喋らないのではなく、主人公が喋らないから本作はサイレントなのだと作品の骨子を提示している。
彼のトーキーに対する態度は、初めから妥協の余地のない完全な拒絶である。
それは、経験に基づく自信や前時代となる恐れからくるものだけでは無い。
頑なに肉声を拒んできた映画が最後の最後に彼の声を晒す。
その台詞は、コテコテのフランス訛り英語。
それが彼の拒絶の正体であった。
本作は、恰も画家が色を除いた形でデッサンを繰り返す様な心の揺るぎない姿を其々に提示している。
コメントする