ライク・サムワン・イン・ラブのレビュー・感想・評価
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恐怖とシュールの波状攻撃
キアロスタミ正直苦手!
しかしこの作品では冒頭、画面オフでの女の電話中の会話から、やがてでんでんが登場し説得をする。
タクシーに乗りおばあちゃんを確認する切ない場面。怪訝なタクシー運転手の顔。やがて到着しての二人の会話。
この一連の流れは、画面構成が「ガチッ」と嵌まり。更に会話の流れも、普通の脚本家ではなかなか書けない様な会話に満ち溢れ。何処までが脚本に沿っていて、何処までがアドリブなのか?それらの違いが解らず、物凄くスリリングだった。「これはとんでない傑作か?」 とすら感じた。
場面は変わり加瀬亮が登場し…この辺りから映画は段々とあらぬ方向へ。「ヤバい!何かウザいぞ…」
その後、加瀬亮をも上回るウザい隣人のおばさんが登場。「もうどうなるんだこの映画!」と思ったら、やって来た‘あの男’
あれ?あれ?マジっすか?
これまでのキアロスタミ作品の中では比較的好きな部類ですけどね。
結局何だったんだろう?との疑問が沢山残ったなあ〜。
※上映終了後、渋谷の雑踏を歩きながら頭を整理させていたら、元スパイダースの井上順とすれ違う。…何てシュールなんだ!
(2012年9月22日/ユーロスペース/シアター2)
夢物語を打ち砕くリアル
上京早々デートクラブでアルバイトを始める大学生のアキコ。彼女はデートクラブのアルバイトをずっと続けるつもりはないだろうし、学生の身分にしたところで期間限定で、恋人ノリアキに対する態度も煮え切らない。中学を卒業して早く社会に出たノリアキは彼女と結婚を望むが、彼女はまだ猶予期間の中にいて、きちんと彼に向き合うことすら出来ない。アキコを指名する元大学教授のタカシはアキコの中に亡き妻、疎遠になってしまった娘の姿を見ていて、現実を見ていない。だからアキコとタカシ二人の距離が縮まって行くのもある意味必然。
ラストの展開は一見唐突に見えるが、二人に比べて圧倒的なリアルに生きるノリアキによって二人のつかの間の夢が破られるのもまた必然なんだと思う。
街の喧騒や車のエンジン音が印象に残るのは、いかにも、A・キアロスタミらしい。
特段外見を変えているわけでもないのに、ノリアキという人物をリアルに感じさせる加瀬亮が相変わらず巧い。
リアルでありながらリアルでない空間と時間。
キアロスタミはズルい・・・(笑)。
観客に何も情報を与えてくれない。観客どころか演じる役者にさえ、その日撮影分の数行のセリフだけを渡して、その役の過去も数秒先の未来も教えなかったそうだ。だからこそなのか、この“日常風景”がリアルでありながらリアルでなく、日本でありながら日本でないような、摩訶不思議な空間と時間を形成しているのは。
前作『トスカーナの贋作』で、嘘とも真ともつかない男女のラブストーリーを生み出した監督が、今回舞台に選んだのは「日本」。かといって監督は、外国人が観る日本を描きたかったのではなく、ましてや本当にリアルな日本を描きたかったわけでもないのだ。前述のとおり、本作の舞台は日本でありながら日本ではない。むしろアメリカでもフランスでも、もしかしたらイランを舞台にしていても成り立つ(国家情勢でこれはムリだろうが)、ごくごく平凡な男女の平凡な物語なのだ。しかしその「平凡」さは、登場人物の心理なり生い立ちなりの詳細情報があってこそだが、キアロスタミはそれを我々に教えてはくれない。観客は画面を追いながら彼らの過去や心理を必死で推測することになる。
主要な登場人物はわずか3人。80歳を過ぎた権威ある元大学教授。デート嬢のアルバイトをしている女子大生。若くして自動車修理場を経営しているその恋人。あらすじと呼べるものを敢えて書くとしたなら、老教授が自分の妻に似たヒロインを自宅に招き、翌朝彼女を大学まで送っていくと、そこに嫉妬深い恋人が待っていた。3人の2日にも満たない物語だ。しかし、何故老教授は彼女を自宅に招いたのか?肉体関係を前提としていないことは確かなようだ(それすらも明確な答えはない)。老教授の真意も判らなければ、ヒロインが何を考えているのかも解らない。田舎から出てきた祖母を駅に待ちぼうけさせたり(この祖母が何故東京に出てきたのかも分からない)、ストーカーのような行動をとる恋人に対しての気持ち(本当は愛しているのか?ただ恐れているのか?)も解らない。意味ありげな行動をとる老教授と、優柔不断なヒロイン。その中で唯一単純な行動をとるヒロインの恋人。彼は嫉妬深く、怒るとすぐ暴力をふるう。結婚さえすれば彼女と上手くいくと信じている。彼だけが観客に自分のことをアピールして来る。彼の存在だけがやけにリアルだ。彼の行動によって物語が進展しているといっても過言ではないだろう。観客は彼の行動の先を読んで、老教授に起きることを想像する。しかし、キアロスタミは我々の想像を超えた展開を用意していた。それはクライマックスでいきなり物語を終わらせるというもの。唐突に切れられた物語に唖然としながらも、エンディングを聴きながら、我々は高速回転でその後の展開を想像することになる。
しかしその想像に正しい答えはないのだ。1つの展開を想像すると、また次の展開を想像する。頭の中には、最悪の悲劇も、何も起こらない結末も、安易なハッピーエンドも、種々様々に想い描くことができるのだ。
本当にキアロスタミはイジワルだ。イタズラをしかけて喜んでいるに違いない(笑)。罠と解っていながらその魅力に抗えないキアロスタミ・マジックの虜になるファンの何と多いことか(私も含めて)。キアロスタミは、今後もきっと様々な罠を仕掛け、観客を魅了し続けるのだろう。
時代遅れのステレオタイプに見えたが、音楽は良かったね!
映画は本編を最後まで自分の目で確かめて観てみる事が大切だし、好きとか、嫌いとか、観終わった印象とか、感想だけでは、映画の良し悪しは決して判断出来ない事を再認識させられた作品だった。
本作を個人的な感想で、好きか嫌いかと言えば、この映画は私には向いていないと答えるか、好きになれずに面白くなかった作品と言う映画の部類に入るのだが、この映画が終わった瞬間劇場の中の誰かが、「あー面白かった!すごく良かったね!」と一緒に観に来ていただろう友人に同意を求めている若い人の声が聞こえたのだ。
映画とは誠に不思議な生き物である。野球などのスポーツと違って、決まったルールが無いために、芸術と呼ばれる文学や映画や音楽、絵画というおよそ、アート作品の類いの物は、観る人、個人個人の感性にピタリと合うか、合わないかで、その作品の評価が大きく分かれるところが有るのである。
そして、私も学生時代には、映画が終了した時に、「あれ?この映画何が言いたかったの?」と観ている間に自分で予想していた結末と違う終わり方にぶつかったりすると、じっくりと考える時間が必要になって、「これは、現在学生の自分には決して理解出来ないけれど、何時か大人になった自分が見直したら解る映画かも知れない」と判断する事も決して少なくは無かったし、そう言う映画を自分は、‘宿題映画’と名付けていたものだ。しかし段々と長生きをしてくると、何となく自分では理解出来る様な気になってしまう映画も増えて来て、今現在観る殆とんどの作品で頭を抱え込んで悩んでしまう作品に出会う事が激減したが、それとは裏腹に、中学生や、高校生の心理を描き出す様な作品は、「え~そぅなの~今の若い人の気持って自分達の学生の頃と違うのかな?」と最近はまた別の意味で、宿題作品が出て来るようにもなっている。
この作品も、あの「友だちのうちはどこ?」キアロスタミ監督作品で、期待が大きかったのかも知れないが、「これって、ちょい違うかな?世界中の人間の共通した普遍的な感情を描いた作品か?」と頭を捻りたくなる作品だったと思うし、しかもこれって今の日本人の感覚では決して無い気がした。大体、今時、街中で公衆電話ボックス見かけないし、「デリヘル嬢」のチラシが公衆電話ボックスに貼って有った時代は20年位前だし、今時の若い女子は、援助交際何てバカな事していないと思うし、もっと贅沢な物欲しいと言う物欲一点張りから、倹約縮小型のエコ生活派の、現実主義の学生へと時代は変化したと思うのだけれども、その分夢の少なくなったと言えるところも有るけれど、より身の丈を考えて生活する、草食系男子とでも楽しんで付き合える、JKが普通なのではないだろうか?
そして実力主義型の中卒男子は車の整備工場経営者であるけれど、自己の感情を抑えられずに、女子供に迄暴力を振るう野蛮人、一方援助交際で、女子高生や女子大生をお買い上げになるのは、高学歴の元大学教授だとは、こんなステレオタイプのキャラクター設定こそ、時代錯誤もいいところだ!しかも、東京を舞台にしてこれを普遍的な人の悲哀を謳い上げている世界観と呼ぶのだろうか?死を間近に感じ取る孤独な男ヤモメの淋しい、かりそめの恋への渇望と言うには、余りにも、日本人の意識を低く見下げていないだろうか?
311を経験しても、今直、へこたれずに、前向きにひたすら、日々頑張って生きている日本人の事を彼は本当に見てくれているのだろうか?残念でならない!
ところで、他の方も、レビューでも指摘が有った、この映画の東京の何処かの駅だと言う駅前ロータリー広場の、古めかしい武将の彫像がある駅は絶対都内23区の駅前には存在はしない。きっと金沢辺りの規模の地方都市の大きな駅前広場の様に感じるのだが、きっと城下町など、城の残っている地方都市の駅前広場ではなかろうか?
本当にロケ現場が気になるね!
教授の家は横浜の外れ辺りかな?
物語の基本の起承転結と言う流れで観てもこの作品、起起起承転・作者自身も解らなくなってしまった感じの無理矢理感満点の強制終了と言った感じのエンドマークになった気がしたのだが?この映画他に観た人の感想が是非聞きたいものである!
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