劇場公開日 2012年10月27日

終の信託のレビュー・感想・評価

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2.5看過できない二つの欠点。

2012年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

終末医療に関する一考察です。それ相応に重たい内容です。気分が滅入っているときには、ご覧にならない方がよいかと思います。本編は大まかに言って、二つの部分に分かれます。前半は臨床的見地からの終末医療を描いています。患者に扮した役所広司と医師の草刈民代の生々しい医療現場を描き出していきますが、気分が悪くなってしまうような描写も少々あります。後半は法医学的見地からの終末医療を描いています。ここに登場する大沢たかおがまさに独善的な検事を演じているのですが、この検事の人物造型に問題があるのです。(ここで星が一つ減る)まず、結論ありきで訊問していくこの検事はあまりに類型的に過ぎ、その人物造型の浅薄さに私は唖然としてしました。人間的な逡巡や躊躇など皆無なのです。まさに絵にかいたような極悪検事です。私は幸い、検察庁で取り調べを受けたことはないのですが、もし、このような取り調べが日常茶飯事であるなら背筋が寒くなる思いがします。そして、信じられなかったのが最後に字幕のみで語られる後日談です。この映画は虚構であります。事実を基に製作された映画ではありません。その虚構である本編に更に虚構である後日談を付け加えて、一体、どうしたかったのでしょう。後日談が輝きを増すのは本編で語られた内容が事実である場合にのみ限られます。(ここで星が一つ半減る)この後日談は完全な蛇足です。逆説的ですが、この後日談が付け加えられることによって、映画全体が画竜点睛を欠いているように思えます。緻密な映画作りで知られる周防監督ですが、今回はなんとも勿体ないことをしました。

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bashiba

4.5受け止め方はアナタ次第

2012年10月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

こういう映画を見ると、TVドラマや漫画の映画化って何なんだろう?と思ってしまう。
勿論悪い訳は無い。ただ、つい思ってしまっただけだ。

周防正行監督最新作。
その重厚な演出は巨匠の域。
草刈民代、役所広司、大沢たかお、俳優陣の熱演も素晴らしい。
周防監督の言う所の「映画らしい映画」として、文句の無い出来。

だが、この映画が掲げるテーマは、人それぞれの受け止め方がある。

重度の喘息を患い苦しむ江木と、彼に託され最期の処置を行う女医・綾乃。
医師と患者の関係を超え、強い絆で結ばれる。大人のラブストーリーと銘打っているが、男女愛というより、「ミリオンダラー・ベイビー」に近い人間愛に感じた。
一見美談のようにも思えるが、その行為は法に触れ、検事・塚原は厳しく追及する。

綾乃に殺意など毛頭ない。江木に託され、彼を思い、苦しみから解放させてあげたかっただけだ。
しかし、医師でありながら自ら患者の命を絶った行為に対して、重い十字架を背負わなければならない。

チューブに繋がれ、肉の塊となっても命を繋ぎ止め苦しみ続けるのは、人生の最期としてはあんまりだ。江木のように尊厳死を望む人が多く居るのもまた事実。
信じ託せる相手が居るのはこの上ない最期だが、江木はその最期を家族に託せなかった。家族を思っての事だが、ここも意見が分かれる所。

厳しく追及する塚原検事は威圧的で悪役的な描かれ方だが、終末医療の法制度がある以上、その主張は公正だ。江木には延命の望みが全く無かった訳ではなく、法の番人として何ら間違っていない。

それぞれの言い分に納得させるものがあり、どっちが是か否かの問題ではない。

明確な答えなどない映画。
受け止め方はアナタ次第。

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近大