「いぶし銀のヒーロー誕生 デュバル様との絡みがかわいい」アウトロー とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
いぶし銀のヒーロー誕生 デュバル様との絡みがかわいい
「最も危険なアウトロー」という予告とポスターのキャッチコピーに踊らされて、危険なトム様に会うつもりだったのに(T.T)、拍子抜け。
まあ、かってに『タップス』のショーンや『コラテラル』のヴィンセントのハードボイルド版を期待した私がバカなのですが。「危険な流れ者」というのなら、よっぽどヴィンセントの方が危ない。
シネコンの記事にあった「リーチャーは高潔さと人間味を持ち合わせて」というのならこの映画のままのジャックでいいのですが。
どーみても、私には、無法者の暴れ者というより、生徒指導の先生??あれ?という感じです。世間のしがらみ関係なく、自分の正義を貫くって言うけれど、自粛ポリスみたいに偏った自己中正義ではなく、どちらかというと世間の迷惑を処罰している感じ。
例えば、
(以下ネタばれ)
特にお店で女の子に接近されて説教しちゃうシーンとか。
ラストのバスの客を注意しにいくシーンなんて、修学旅行ではしゃぎまわっている生徒を叱りに行く図みたいな。
そもそも、容疑者バーの元に現れるのだって、人を撃ちたくって戦地で人を銃殺したバーに「今度またやったらお仕置きだぞ」と約束したのを果たしに来たわけでしょう。ニュース見て、あ、あいつやったなと思って。違反した生徒を懲らしめるみたいな。と思ったら、あれ、これバーの仕業じゃない、彼ならこんな間抜けなやり方しない、それを確認しているうちにいつの間にか悪者退治しているし。
と、はじめの期待は裏切られましたが、その最初の思い込みを払しょくすれば、全体的にセピア色のトーンの映像と相まってレトロ感・手作り感・等身大感を醸し出してくれる良作です。地に足とも書きたいけど、流れ者に「地に足付いた感があふれる」というのも変ですよね。
正直言えば、女弁護士のノリや、推理の過程は2時間サスペンスにもありそうな設定ですが、トム様がからむとこういうカーチェイスやアクションが入って、こういうテイストになるのね、普段のカレーライスが、レストランのカレーになって出てきた感じ。
(ネタばれ)
カーチェイス+最後車を乗り捨てて、人々にまぎれてバスで逃走するオチとか(クスッ)
モーテルのシーンで、ジャックが「寝たい」と言いだしてヘレンがドギマギして、なのに車のキーを渡されて部屋から追い出されてヘレンが地団駄踏む場面とか(クスッ)、
一番にんまりしたのは、デュバル様との共演。
デュバル様って『デイズ・オブ・サンダー』の師匠(正確にはカーレースのメカ担当)ハリー。あの時も二人の掛け合いに心キュンとなりましたが、今回も良いですね〜ぇ(*^▽^*)。
今回のジャックは『デイズ・オブ・サンダー』のコールより一人前になって対等にやりあっているつもりの設定なんだけど、デュバル様の方がもう本当に懐大きく、結局トム様をそれとなく包み込んで、トム様甘えてる、(クスっ)て感じでした。射撃場で、トム様の隣にデュバル様がいるシーンなんかも親子が並んで話しているかのような雰囲気に見えたのは私だけ?トム様なんだか、ジャックなんだかよくわからないけど、心がキュンとしちゃいました。
悪役は後半拍子抜け。
お間抜けした人への罰の場面は綺麗でドキドキゾクゾク、戦闘シーンもハラハラですが、う〜ん、ラスボス、ラスボス? しかも裏切り者が唐突過ぎてついてゆけない。
ラスボスを演じたのは、有名な監督らしい。個人的に後世に残したいと思っている『アクトオブキリング』にも制作として関わっていらっしゃる。風貌・雰囲気はラスボスっぽさがあるのだけれど…。脚本・演出の仕方で、失速してしまった感じ。
原作未読。
昔の西部劇みたいに、風来坊が街の巨悪を退治して去るという流れになるのかな?(『木枯し紋次郎』みたいだ)
でも、街が昔みたいに小さくない、悪が大きくなっているから、なかなか、爽快感あふれる展開というのは難しい。この映画では警察内部に、次回作では軍部内部に…だったし。
リーチャーの活躍によって、助けられた人はいるのだけれど、どちらも、「ああ、助かってよかった」というように、助けられた側への共感もあまりできなかった…。シチュエーションのおもしろさはあるのだけれど…。
ドラマ版もできるのだそうな。
トム様の『3』も企画で止まっているのだそうな。
楽しみにしています。