とらわれて夏のレビュー・感想・評価
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ヒクヒクからキュンキュンへ
原作未読。
オレの大嫌いな、ジェイソン・ライトマン監督作。
「Labor Day」
夏休み最後の日。
本作、少年の成長の物語であり、その成長の一部分が母の幸せ、へと繋がるもの、ということで、愛が罪?とか言う話ではない。
どうもケイトは「愛を読むひと」のインパクトが強いようだ。
まあ、ゲスなオレはこの設定で、初めは、そりゃあもう、ヒクヒクしてましたよ。
だけど、この主人公の少年は、脱獄犯のキャラクターにすっかり虜になり、この男だったら、母ちゃん、盗られてもいいか、と、彼の性への目覚めを並行で描くことで、女としての母ちゃんの幸せを望むようになる。
まあ、ヒクヒクポイントはそれが分かった時点で萎えるのではあるが、キュンキュンポイントは上がっていく。
母ちゃんの幸せを望む少年の映画は、もうそれだけでオレの点は甘くなる。
この物語、誰一人として、「悪い」人間が出てきていない、という点が出色。
それは、悪人がいると、この話の本核に誤解が生じるからで、それはどんなにメルヘンになろうが、非現実的になろうが、悪人は出てはいけない。
出てはいけないのだ。
そう、悪人はオレのような下品な観客のみ。はっはっは。
ただし、それでも、少年の揺れ具合はもう少しハードでも良かったのではないかと思われる。
離れた父親との会話で、その場にふさわしくない単語を使ったり、と思わせぶりをしてみたり、一瞬現れた少女の存在はそのためではなかったか。
頭の悪い隣人の息子もまあ、必要はない。ラストのピーチパイもまあ、必要ない。
まあ、母ちゃんが、もうホントやばい状態で再会のほうがぐっとくるのだが、ケイトは「愛を読むひと」とカブってしまうので、こんなところだろうか。
ジョシュ・ブローリンのヒゲ変化が素晴らしい。
脱獄時のヒゲ、ヒゲを剃っての心機一転な顔、出所時のヒゲ。
実は一番ヒゲがない時が一番ヤバイ展開、あるいは一番ヤバイ顔、なのがまた面白い。
出所時のヒゲに、ホロっときたのは、ケイトでなく、オレ。。
追記
ジェイソン・ライトマン。その作品群はヘドが出るほど、嫌いだったが、これは好きだ。
でもすごい臭さそうな「ヤング≒アダルト」はやっぱり観ないよ。
日本の映画にも似たような映画がある。 『幸せ◯黄◯◯ハ◯カチ◯フ』
期待造反理論
犯罪者は犯罪者
脱獄囚は脱獄囚
そうですそうです。
ストックホルムシンドロームですよ。しかし、
なんで居座るのか?
ヒゲ面でサイコ野郎な76歳のク◯ジジイだったら、お礼にルンバを踊ってくれるのだろうか?
アメリカン・ニューシネマに対するアンチテーゼと理解は出来るが、モラトリアム人生を描く事からは脱し切れていない。下品で破滅的なアメリカン・ニューシネマの流れを脱却したい姿勢は評価出来る。しかし、男目線な男の夢だけを描く事は相変わらずやめていないと言い換えられる。言うまでもなく、この映画は一人の哀れな女性の人生で遊んでいるに過ぎない。もっとも、こんなタイプの女性は、人情に熱い絶滅危惧種大和民族にもいない。幸せな有閑マダム(死語♥)の一服の清涼剤として見るには最適だ。
つまり、真面目に金出して見るような映画じゃない。良い映画だと思う。何しろ眠くならなかった。
けど、どうせ出鱈目なら、プリンスエドワード島へ逃亡を成功させて貰いたかったね。そうなるとロケ地の経費がかさむが。
なかなかよかった
期待しないで観るとこうなので、やめられません。
ただ、邦題がいまいち。
幸薄そうなシングルマザー、アデル。
でもどこから見てもきれいで、周りが放って置かないでしょう。
ご近所の桃おじさん…ちょい役にシモンズさん。
父親の新しい家族の息子はルーカス・ヘッジス。
ナレーターはトビー、ようやく出てくるのは本当に最後の方。
なかなかぜいたくなキャスティング。
事情が事情なので暗さがつきまとう。
終始危うさを感じる音楽と雰囲気。
なんとか幸せになってくれ、と願わずにいられなくなる。
あそこでカナダへの逃亡が失敗して、逆によかったんだな、とも。
思春期のたった5日間が人生にどれだけ大きな影響を与えるか。
良い話だった。
ピーチパイ食べたい。
何かエロスを感じますよね(笑)
ジョシュ・ブローリンとケイト・ウィンスレットが大好きなのでリリース当時観てみたら作品も大好きになりました♪ ピーチパイが食べたくなります(笑) フランクが根が善人でよかった、ラストで出所してまたアデルと一緒になれてよかった(涙) 出所前にヘンリーに手紙を書くのも好きです♪ ヘンリーが成長していく過程でフランクが教えてくれたタイヤ交換を見事にやっているシーンは微笑ましかったです。
とても上品なエロスに満ちた作品。リアリティを求めてはいけない。
精神的な病を抱えるシングルマザー、思春期を迎えた彼女の息子、殺人罪で服役していた脱獄囚の3人による心の交流を、息子の視点から描くヒューマン・ドラマ。
主人公であるシングルマザー、アデルを演じたのは『タイタニック』『エターナル・サンシャイン』の、レジェンド女優ケイト・ウィンスレット,CBE。
アデルと恋に落ちる脱獄囚フランクを演じるのは『グーニーズ』『メン・イン・ブラック3』のジョシュ・ブローリン。
ナレーターでもある、アデルの息子ヘンリーの青年期を演じたのは『スパイダーマン』シリーズや『華麗なるギャツビー』のトビー・マグワイア。
アデルの隣人ジャービスを演じたのは『スパイダーマン』シリーズや『ジュノ』の、後のオスカー俳優J・K・シモンズ。
原題は『Labor Day』。
9月の第1月曜日に設定されている祝日で、「労働者の日」と訳される。
本作における重要な1日であり、また「夏休みの終わりの日」という意味合いも持っている。
『とらわれて夏』という邦題、意味わかんないしダサい。まぁそのまま『労働者の日』と邦訳するわけにもいかないだろうけどさ。
本作の白眉はなんといってもケイト・ウィンスレット!
とにかくエロい…😍気怠げな雰囲気に胸元の大きく開いたネグリジェ…。あんな母親がいたら思春期の息子は参っちゃうね!
ケイト・ウィンスレットとジョシュ・ブローリンの大人の恋愛が本作の見どころな訳だけど、この関係がエロいんだ!
とはいえベッドシーンがあるわけでは無い。特別露出が高いわけでもない。
フランクがアデルの体を縛るため肌に触れる描写とか、フランクが縛られたアデルに食事をさせる描写とか、パイを作る時に手と手が触れ合う描写とか、接触するシーンがいちいちアダルトな雰囲気を醸し出している。
性的な興味が芽生えてきた思春期の息子の目線から描かれる物語なので、エロスというのがテーマの一つとしてある。
そのエロスの描き方がとても上品で、風格のある作品に仕上げてきているな、という印象を受けた。
物語は脱獄囚と寂しさを持て余す女性の悲恋という、まぁはっきり言って手垢のついたもので真新しさはない。
この手のラブストーリーにいちいちツッコミを入れるのもヤボだと思うんだけど、やっぱりリアリティの無さが気になってしまってイマイチ入り込めない…💦
出会って3日やそこらの囚人と駆け落ちしようとするか、普通!?
警察に追われてるのに、裏庭でキャッチボールなんてするか、普通!?
国境を越えようというのなら、もっと綿密な計画を立てないか、普通!?
フランクって異常にパーソナルスペースが狭くて、凄くベタベタアデルを触る。
脱獄囚にベタベタ触られたら結構怖いと思うんだけど、それで恋に落ちてしまうアデル。
もうこの時点で「ありえねー!」と言ってしまいたくなる。
またフランクは隠れている最中だというのに結構外に出て家の修繕やらキャッチボールやらしてる。
人目につきますよマジで。
最終日のグダグダ感も異常。全員馬鹿なのか?
国境越えなきゃいけないんだからもっと計画を練れよ!
子供を勝手にフラフラ出歩かせるなよ!
金を下ろすのももっとうまくやれよ!
フランク鍵閉めとけよ!ババァが入ってきてんじゃねぇか!!
やたらと「近親相姦」というワードが出てきたり、ヘンリーがガールフレンドに母親の彼氏を追い出せと言われたり、「情報提供者に1万ドル」という新聞の見出しが強調されたりしていたので、「あ、これは母親を取られたくない息子が最後の最後でフランクを裏切るな…😏」とか思ってましたけど、そんなサスペンスフルな展開にはならず、良い話風な感じに着地。
毒にも薬にもならない感じの映画でしたが、ケイト・ウィンスレットの魅力が爆発しているので一見の価値はある💥
ピーター・パーカーやJ・ジョナ・ジェイムソンやフィル・コールソンやサノスが出てきますが、マーベル・コミックスとはなんの関係もありません🤣
最後捕まるところうぉおおおってなる😢愛する人とその息子が悪くないよ...
最後捕まるところうぉおおおってなる😢愛する人とその息子が悪くないようにする所がほんとにいい人なんだと思った。
私はこの作品が好き
こんなに官能的なパイ作りを観たのは生まれて初めてでした。
やっぱり男性の料理してる姿って素敵!笑
そして、この脱獄犯いい人で悪くないじゃん!
まぁ悪いけど笑と思ってしまった。
ケイトは寂しい役。流産のシーンは彼女の抱えてる悲しみ、笑えない理由が何だったのか痛いように伝わってくる。
脱獄犯が突然やって来て家族になる。
けったいな話だけど、母子家庭に突如お父さんが現れる感覚って、こーなんだろうなぁと描かれている。
しかも、母親が選んで連れてきた人ではなく突然の訪問者だということ。
男の子が、母親を守りたいと思うこと。
そして段々家族になっていくシーン。
男の子が状況よーく観察している視点も上手に描かれていて、多感な時期を上手に図書館の女の子で表現しているし、あの少しスモッグ掛かった撮り方も時代と状況を表現していて良かったです。
ママ想いな男の子の視点、息子を思う母、複雑な家庭で育つ子供を強く感じ取れたのも良かった。
文学っぽい原作が元ネタな作品なのに、きちんと味わえて退屈しなかった素晴らしかった。
あぁ、あのピーチパイ食べてみたいなぁ!
奥様向け
ほんの数日間の恋を、数十年後まで引っ張る「マディソン郡の橋」の変形バージョンの様な作品でした。しかも、ふたりが結ばれないのは、不倫ではなく相手が服役しているから。
ジョシュ・ブローリンのワイルドな男気とケイト・ウィンスレットの薄幸な感じがお似合いです。
ストーリーはベタすぎで物足りなさはありますが、ロマンティックな非日常を味わいたい奥様にちょうどいい作品です。ラストもハッピーエンドです。
中高年の方推薦します。
久しぶりにハッピーな気持ちで見ました。大人のメルヘン映画でした。細かいこと、突っ込みどころは置いといて。最後のハッピーエンドで嬉しくなりました。
まるで「逃亡者」と「黄色いハンカチ」が合体したような我々世代が絶賛するような内容です。
好き、とか愛してるとか言わなくなって数十年のお父さん必見です。
余談ですが最後のシーン、ドアに黄色いハンカチが付いていれば・・・・
たった5日間でも、人生を変えるにはじゅうぶんの時間
たった5日間のフランクの脱獄劇は、はらはらしながらも予定調和の結末。
囚われた母子が犯人に寄り添ってしまう「アムステルダム症候群」的な映画で、妻夫木主演の『悪人』を僕は思い出していた。
ボディコンタクトが露骨すぎるとか、なんで隣人に見つからないのかとか、ちょっと都合のいいストーリーだなあと観ていたが、終盤、5日間が終わったあとからの3人の生き方に感銘を受けた。
アデルはもちろん、息子のヘンリーの人生をも大きく変えた、フランクという人間の大きさにしびれた。
たった5日間に育んだ信頼が、28年たっても薄れない。3人とも。フランクの28年、アデルの28年、ヘンリーの28年。それは空白の失われた時間などではなく、再会のための熟成期だった。なんと深い愛だろう。
きんちょうの夏。
観方によって好き好きが分かれそうなドラマなんだけど、
俳優たちの演技力で不自然な部分をカバーしている作品。
仕事不詳で鬱気味の母親をせっせと世話している息子くん、
彼が語り部であり彼目線で描かれていく物語。
なぜこのお母さんアデル(ケイト)がそうなったかは、徐々に
明かされていくけど、決定的なのは何度にも渡る流産と死産。
心も身体もボロボロのところへ、夫は秘書と浮気し離婚に至る。
二人の間に生まれた息子ヘンリーは、週に一度再婚した父との
食事会に参加している。このお年頃って非常に難しい。
そんなところへ脱獄犯!J・ブローリンだもんな。まさに適役?
この脱獄犯フランクにも謎がたくさん。まず脱獄理由が知りたい。
彼の過去(つまりなぜ殺人に至ったか)はのちにフラッシュバック
されるのだが、これもめっぽう辛い。アデル&フランクなんていう
コンビでも組めそうなほど(ゴメンなさい)二人の不遇は似ている。
脱獄犯とはいえ、料理は巧いし力仕事をホイホイとやってくれる。
みるみるうちに家はキレイになり、ヘンリーは草野球まで教わる。
非常にほのぼのとしていい場面なのだが、こんなことやってたら
普通バレるだろ!と心配になる。アデルは鬱だというが、次々と
友人が訪ねてくる。これで5日間保てたなんて、奇跡だと思った。
さらにはヘンリーの、なんて優しい母親思いの息子なの!と絶賛
したくなるあの忍耐ぶり。でも息子って母親にはそうかもしれない。
離婚してからめっぽう塞ぎこんでいた母親が、脱獄犯にときめいて
女を取り戻していく様子が生々しく、さらに息子の方も相手の男を
嫌いではないのだ。こりゃ脱獄犯にはうってつけ!の環境である。
なぜ脱獄したのかは結局語られないが、アデルに一目惚れした感
のあるフランク、いよいよ家族でカナダへ逃避行だ!と話は飛躍。
そう上手くいくワケないだろーよ…と思っていると案の定、
さまざまな角度方面から周囲が不信の目を向け始めるのだったが…
出色は息子ヘンリーの抑えた演技と、謎の転校生少女の出現。
あのアヴリルみたいなアイメイクの女の子が繰り出す悪態の数々に、
もうヘンリーの心は乱れまくり!母は自分を捨てるんじゃないか、と
心配で仕方ない(さらに性への目覚めもあり)精神不安定な状態に
陥りながらも、何とか二人についていこうと踏ん張っているという…
ねぇやっぱり思うんだけど、本当にこの二人を幸せにしたいんなら、
逃げていないでしっかり刑期を務め上げ、それから一緒に暮らせば
いいじゃないよと、まともなことを考えてしまうから話にならない私。
え、スパイダーマン!?と思ったらそうだった。あらビックリ^^;
ラストに向けてあのピーチパイが活きてくるという心憎い演出。
不幸を命一杯味わった人は、幸せにならなきゃ不公平だからね。
(あの巡査J・ヴァン・ダー・ビーク!?ドーソンの小川だ~懐かしい)
生きる気力を失ったヒロインの絶望した姿が、物語にリアルティをもたらしたくれた
脱獄犯と恋に落ちるなんてあり得ないと誰しも思う事でしょう。けれども愛を失った女の悲哀を丹念に描くことで、究極の状況で生まれる愛を見事に伝えてくれた作品となりました。
『JUNO/ジュノ』『ヤング≒アダルト』など、自分で納得がいく生き方を選ぶ主人公を共感をこめて描いてきたジェイソン・ライトマン監督。原題“労働の日”は9月1週目の月曜日、夏の終わりの5日間の出来事を描いたことによります。
物語の舞台は、1987年のアメリカはニューハンプシャー州の田舎町での話。ご当地の人でなければ、そこってどこよと首を傾げる人ばかりでしょうけれど、要するに一昔前のアメリカの田舎町たたずまいとか、まだ携帯もなかった時代のコミュニケーションの取り方とか、そんな年代と地方が感じさせる特別な匂いや風情に加え、晩夏ならではのうっとうしい暑さという映画のルックにこまかく神経を使っている作品であることをよく描き込まれていたと思います。
この静かな町のはずれに、夫と別れてから重い鬱にかかったシングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)とまだ13歳ながら、この母を自分が守らなければと思っているけなげな息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)とが、二人でつつましく暮らしていたのでした。アデルは、一人息子を世話するというより息子に守られることで辛うじて生活する状態だったのです。
父のいない家で、幼い息子が弱い母を守る気でいるというのは、古い西部劇以来のアメリカ映画の伝統的なテーマですね。
アデルは、ヘンリーと一緒にスーパーに行ったところ、屈強の男(ジョシュ・ブローリン)が息子を捕まえ、家に連れて行けというのです。何の抵抗もなく、男の要求に従って家まで案内してしまうのは、疑問でしたが(^^ゞ
聞けば、フランクと名乗るこの男は刑務所から、盲腸の手術のため病院に移されたのを機会に脱獄したばかり。息子が人質にされたなら、脱獄犯から子供を守ろうと母親が頑張るという展開になるものとばかり思い込んでしまいました。普通のサスペンスならそういう展開が普通でしょう。
ところがフランクは一見して怖そうな男でしたが、意外と繊細な神経の持ち主でした。散らかり放題になった家を掃除し、床を磨き、母子の家を修理をマメにこなしていきます。またヘンリーに車の修理を教え、キャッチボールの相手をする姿はまるで父親のよう。 母子は捜査して回っている警察や近隣の人々の目から、つい成り行きで彼をかくまってしまう。そして次第に家族の一員として溶け込むフランクに、アデルは次第に女としてのこれまでの満たされてこなかった思いをぶつけるようになっています。二人で一緒にパイを作る様子がそのままラブシーンに見えてきたり、ふたりが短時間で恋に落ちてしまう過程はちょっと素敵な描き方でした。
母ではなく女として生きたいのにためらいがある母と、フランクに父親像を重ねる息子。そしてフランクには心ならずも殺人を犯した過去がありました。3人の俳優たちの息がうまくあい、信頼が増せば増すほど逮捕の時の迫る不安が増してきます。招かれざる来客が、何度も逮捕のピンチを感じさせるハラハラ感を増幅してくれました。追われる者の緊張感がマックスに向かうほど、実りそうにない愛の辛さが浮き上がっていったのでした。
フランクと一緒にカナダに逃げる恋の逃避行の計画が実行に移されることになって、持ち上がるヘンリーの不安。それは2人は自分を置いて出ていくのではないかといあらぬ疑いでした。けれどもアデルとフランクが交わす視線を盗み見る少年の心は穏やかではいられなかったのです。この物語は、大人へ脱皮しつつあるヘンリーの性への目覚めと葛藤が描かれる面も持っていたのです。しかし本作にはベッドシーンなど官能を描く描写は皆無。あるのは心と体の飢えが満たされることのささやかな幸せなんですね。
心の不安がヘンリーをつき動かして、実の父親への置き手紙を残すことに。結局この置き手紙が、波乱を生むことになり捜査の手が迫ってくるのです。
ここで終われば、ああそういうものかで済ませることもできたはず。けれどもやがて年月が過ぎて大人になったヘンリーに、フランクが彼と母に作ってくれた例の桃のパイが思いがけない人生の贈り物に繋がるところが、余韻を膨らませてくれる後日談でした。そして何よりもラストの心温まる展開が、心地よく胸に染みいったのでした。
大人の愛と再生を優しく見つめたラブストーリーとして、とてもデリケートな感触でこの夏の5日間の出来事を描いている作品。物語が一旦終わるその後も、3人が送ったそれぞれの人生を想像させ、忘れ難い哀感が残る佳品としてお勧めします。
何と言ってもヒロイン役のケイト・ウィンスレットの熱演のおかげで、生きる気力を失ったヒロインの絶望した姿が、物語にリアルティをもたらしたくれたことが特筆に当たりますね。
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