劇場公開日 2014年5月1日

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とらわれて夏 : 映画評論・批評

2014年4月22日更新

2014年5月1日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

母親と脱獄囚、そして13歳の息子が過ごす運命の5日間

たとえ一緒に過ごした時間は短くても、人生に大きな意味を持ちつづける人がいる。シングルマザーのアデルと脱獄犯フランクのラブストーリーであり、そんな2人を見つめる13歳の息子ヘンリーの成長物語でもある5日間が描きだすのは、そうした運命の出逢い。

脱獄犯との恋は一歩間違えばメロドラマになりかねない世界だが、そこは実力派ぞろいのキャストである。息子を守ろうとする母の強さを見せる一方で、フランクとの愛によって再び女としての輝きを取り戻すアデルを演じるケイト・ウィンスレット。性に目覚める難しい年頃でありながら、女をよみがえらせる母親を嫌悪するどころか、フランクに父親像を重ね、男としての憧れすら抱くヘンリーを演じるガトリン・グリフィス。そして、フランク役のジョシュ・ブローリン。それぞれが抑制のきいた演技で、幾層にも重なった思いを繊細な表情のなかに浮かびあがらせる3人の素晴らしいこと!

なかでも、脱獄犯という響きとは裏腹の優しさで母子を包み、力仕事はもちろん、美味しそうなピーチパイまで焼いてくれるフランクの男っぷりときたら、アデルならずともときめかずにいられないほど。しかも、それほどの人物であるフランクがなぜ刑務所に入ることになったのかをひも解くフラッシュバックがまた情感をかきたてる。彼が追われる身であるというサスペンスとあいまって、大人の恋も少年の成長もいっそう深みを増していく時間は実に濃密。ずっとその世界に身を委ねていたいくらいだ。

だが、本当の感動は、彼らが過ごした5日間の先にある。フランクとの出逢いがアデルとヘンリーにもたらしたものの大きさと温かな余韻に包まれたら、3人がピーチパイを焼くシーンがひときわ幸福によみがえって、無性にフランクのピーチパイが食べたくなるはず。

杉谷伸子

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