「きんちょうの夏。」とらわれて夏 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
きんちょうの夏。
観方によって好き好きが分かれそうなドラマなんだけど、
俳優たちの演技力で不自然な部分をカバーしている作品。
仕事不詳で鬱気味の母親をせっせと世話している息子くん、
彼が語り部であり彼目線で描かれていく物語。
なぜこのお母さんアデル(ケイト)がそうなったかは、徐々に
明かされていくけど、決定的なのは何度にも渡る流産と死産。
心も身体もボロボロのところへ、夫は秘書と浮気し離婚に至る。
二人の間に生まれた息子ヘンリーは、週に一度再婚した父との
食事会に参加している。このお年頃って非常に難しい。
そんなところへ脱獄犯!J・ブローリンだもんな。まさに適役?
この脱獄犯フランクにも謎がたくさん。まず脱獄理由が知りたい。
彼の過去(つまりなぜ殺人に至ったか)はのちにフラッシュバック
されるのだが、これもめっぽう辛い。アデル&フランクなんていう
コンビでも組めそうなほど(ゴメンなさい)二人の不遇は似ている。
脱獄犯とはいえ、料理は巧いし力仕事をホイホイとやってくれる。
みるみるうちに家はキレイになり、ヘンリーは草野球まで教わる。
非常にほのぼのとしていい場面なのだが、こんなことやってたら
普通バレるだろ!と心配になる。アデルは鬱だというが、次々と
友人が訪ねてくる。これで5日間保てたなんて、奇跡だと思った。
さらにはヘンリーの、なんて優しい母親思いの息子なの!と絶賛
したくなるあの忍耐ぶり。でも息子って母親にはそうかもしれない。
離婚してからめっぽう塞ぎこんでいた母親が、脱獄犯にときめいて
女を取り戻していく様子が生々しく、さらに息子の方も相手の男を
嫌いではないのだ。こりゃ脱獄犯にはうってつけ!の環境である。
なぜ脱獄したのかは結局語られないが、アデルに一目惚れした感
のあるフランク、いよいよ家族でカナダへ逃避行だ!と話は飛躍。
そう上手くいくワケないだろーよ…と思っていると案の定、
さまざまな角度方面から周囲が不信の目を向け始めるのだったが…
出色は息子ヘンリーの抑えた演技と、謎の転校生少女の出現。
あのアヴリルみたいなアイメイクの女の子が繰り出す悪態の数々に、
もうヘンリーの心は乱れまくり!母は自分を捨てるんじゃないか、と
心配で仕方ない(さらに性への目覚めもあり)精神不安定な状態に
陥りながらも、何とか二人についていこうと踏ん張っているという…
ねぇやっぱり思うんだけど、本当にこの二人を幸せにしたいんなら、
逃げていないでしっかり刑期を務め上げ、それから一緒に暮らせば
いいじゃないよと、まともなことを考えてしまうから話にならない私。
え、スパイダーマン!?と思ったらそうだった。あらビックリ^^;
ラストに向けてあのピーチパイが活きてくるという心憎い演出。
不幸を命一杯味わった人は、幸せにならなきゃ不公平だからね。
(あの巡査J・ヴァン・ダー・ビーク!?ドーソンの小川だ~懐かしい)