「『恋愛版バイオハザード』」ヤング≒アダルト ウシダトモユキさんの映画レビュー(感想・評価)
『恋愛版バイオハザード』
歳とったからか、刺激に慣れてしまったからか、血しぶきドバーとかモンスターがおーとかいう場面で辛いと思うことは少なくなったけれども、その反面“バツが悪い場面”とか“痛々しい場面”なんかは厳しいものがある。
そういう意味では残酷シーン満載の『恋愛版バイオハザード』な映画だと思う。
ただし、主人公のエイビスを、例えば『危険な情事』のグレンクローズや『ミザリー』のキャシーベイツのような“モンスター”として観るか、もしくはそれこそ『バイオハザード』のミラジョボビッチや『エイリアン』のシガニーウィーバーとして観るかによって大きく評価が分かれるような気がする。
たくさんのレビューや感想で、主役のエイビスが「懲りてねー」とか「成長してねー」とかで「不快だ!」という意見が多いので、おそらく前者の視点が多数派で、たぶん吹替版の声優さんもそーゆーニュアンスで演じてたと思う。
僕自身もラストシーンの車(ミニ?ミニクーパー?)の正面カットまではどっちか決めかねていたんだけども、バンパーも取れちゃったボコボコの状態がアップになったことで、後者だと確信した。
その確信をもって物語を思い返すと、グンと味わいが深まる。このバイオハザードのラスボスは誰だったのか?それはもちろんあの、ドラム妻である。
クライマックスのあのパーティー、エイビスを招待しようと言い出したのはドラム妻だったと、室伏似ハンサムは明言している。しかも、エイビスの辛い状況、精神的な衰弱を知ってた上での招待である。最初の自宅訪問で、エイビスが室伏ハンサムに未練タラタラだということには当然気付いていただろう。その上でライブの夜、室伏ハンサムをエイビスに送らせている。まるでワザと隙を見せ、罠に誘い込んでの公開処刑じゃないか。そりゃあ白いブラウスの胸元も(心の)血で真っ赤になるわ。
そして翌朝の、男友達の妹との会話の場面。一見『フォローしてもらっておきながらデリカシーのない返答をした』というように見えるんだけれども、実は『都会のキツさが見えてない子供じみた憧れを突き放した優しさ』のように思えてくる。
そしてラストシーンの車である。ボコボコなのは分かっている。充実のシティライフも、故郷の温かな居場所も、結局どちらも虚構だった。でも、だからこそ自分の心は折れてはいけない。ひとりでまた、孤独な都会に戻り戦うのだいう矜恃を感じさせる、素敵な締めくくりだったと僕は思う。
このレビュー読んで違和感がすっきりしました。
「あなたが孤独で可哀想」で元彼の出産祝いに呼ぶのも変だし
後味はよろしくないけど主人公の図太さはある意味救いですね。