プンサンケのレビュー・感想・評価
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離れ離れになった家族の哀しみを背負う男
力尽きた眼前に広がる一面の空。「生まれ変わったら、あの鳥達のように、自由にどこにでも羽ばたいていける、そんな世界に生きてみたい」と彼は思ったに違いない。
南とも北の者とも正体不明のプンサンケと名乗る男。自らの命の危険を犯してまで「運び屋」として、統一戦線を行き来するのはどうしてなのか?劇中、彼が一言の言葉も発しないのは興味深い。怒りも、哀しみも、愛さえも。その代わり、目で、手で、時には慟哭で以って全身を震わせ、彼の心の内を私たちは汲み取ることができる。
タイトルのプンサンケ(豊山犬)は北朝鮮の狩猟用犬種で、獰猛で力強く、一度噛んだ獲物は放さないのだとか。
終盤、彼が復讐の手段として、密室に南北の敵対する人員を閉じ込め、銃を投げ込み殺り合わせるシーンは、すさまじい。憎しみや不信、欲望の塊化した人間が、闘犬そのものにみえてしまう。
そして、プンサンケは、再び南北に分散された家族の写真やビデオメッセージを届ける。亡き愛する人のもとにもあるものを届けに。。
キム・ギドク監督がシナリオを手がけたことでも充分、話題性がありましたが、主人公を力演したユン・ゲサン君の、彼の代表作の一つになるであろう作品と個人的に満足しています。
ロマンを感じる
南北朝鮮の国境を軽々と越えるところに大変ロマンを感じる面白い映画だった。しかしヒロインは性格がすごく悪いのに、チヤホヤされて、単に度を越えた美人だとしても、主人公が童貞でもない限りあれはない。南北の工作員が一室に閉じ込められる場面は軽い『SAW』みたいな状況で面白いんだけど、長かったし、ギャグっぽかった。でもそうは言ってもとてもエネルギッシュで面白い元気の出る映画だった。
仏頂面で、こんにゃくを語る
韓国映画界の異端児、キム・ギドクが手掛けたオリジナル脚本をベースに置いた作品を、「ビースティ・ボーイズ」のユン・ゲサンを主演に迎えて描く群像劇。
想像してみてほしい。日本の任侠映画にて、「奥歯ガタガタ言わすぞ、コラ」と巨大なチェアを陣取って叫びそうな強面の男。彼は、何を話しかけても笑わない。そんな一人の男が、刺すような睨みを利かせて「こんにゃく」を語っているのだ。
「くにゃっとしてよ、タレ・・とか、きな粉かけて食べる。梅とか、混ぜ込んでんのよ」
もう、私達はその男の話から離れる事ができない。「・・糸、こんにゃくってのもある」「・・へえ」話がどうっていう事ではない。語る状況がすでに事件なのだ。深刻なストーリーを深刻に語っては芸がない。深刻に、硬いテーマをいかに叩き壊し、ぐにゃぐにゃとしたユーモアでくるめるか。そこが、聞くものを引っ張り込む不思議な魅力が生まれるか、否かの分岐点だ。
その点においては、本作は大いに成功していると言えるだろう。北朝鮮と韓国、我が国日本からも注目を集めている38度線の歴史、現状という深遠な政治的テーマを掲げる本作。観客は、黒ずくめの「奥歯ガタガタ」おじさんの巨大チェアの前に、緊張の面持ちでたちつくす事になる。怖い・・面倒だ、いざとなったら、逃げる準備は出来ている。
だが、その混沌としたテーマに身構えた観客は、いきなり面食らう。冒頭こそ韓国映画らしいアクションと政治を織り交ぜたスピード感に満ちるが、物語は易々とはいかない。恋愛色、ファンキーなカーアクション、会話劇、何やらエロ。もう、しっちゃかめっちゃかなちゃんぽん劇場が展開される。
「なんじゃ、これ?」観客は戸惑いながらも、この奇天烈な政治ドラマの暴走から目が離せない。「どうなる?どうする?」思いもかけない「こんにゃく解説」が、熱を帯びる。「きな粉って・・甘いんだぜ!!」
その極めつけが、クライマックスの密室劇である。政治的に繊細なテーマを、強引にコメディに落とし込んで苦笑いへと誘い込む。簡単そうに見えて、これは相当な技術と聡明なセンスが要求される演出術である。現に私達観客は、このクールなコメディを馬鹿にせず、そこに作り手の美学を見る。
「どうなる?どうする?」の好奇心の中に、静かに38度線の迷宮が忍び込む。「こんにゃく」はいつのまにやら、人間の心の機微へと昇華する。これぞ、映画人が目指すべきシリアスドラマの到達点ではなかろうか。
前作「アリラン」において、シリアスな自問自答ドキュメンタリーという形を取りながら、「俺って、こんなに格好良いんだぜ!」と自画自賛に浸る変態映画を世界に叩き付けたキム・ギドクのハイセンスなユーモアに満ちた一本。作り手の新しい(いやらしい)可能性を感じさせてくれる意欲作だ。
運び屋の活躍だけを描く映画ではありません。
南北朝鮮の38度戦を行き来する謎の男のお話。
てっきり、この行き来する運び屋が38度戦を越える時のドンパチがメインで話が進むのかと思っていたら…そんな単純な話ではありませんでした。
毎回韓国映画見て書き込む内容だけど、お話の作り方が面白い!さすが!
南北諜報員の攻防戦も面白いですが、終盤に両者がひとつ部屋にとじこめられて争うシーンはソウの密室シーンをさらに緊迫させた名シーンに出来上がっています。
この状況を作り出す話の進め方もうまい!
愛国心は必要だけど、過ぎると無意味…、南北分断の悲愴さがしみじみ語られています。
相変わらず…容赦なく最後は皆死亡…これがさらに現実の重みを突き刺しますね。
ガッツリ、ドッシリ映画を見たい方にオススメです。
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