「H・R・ギーガーのエイリアンは、最後に登場⁉️」プロメテウス kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
H・R・ギーガーのエイリアンは、最後に登場⁉️
最新作『エイリアン ロムルス』鑑賞前にBlu-rayで復習。
リドリー・スコットが監督としてシリーズに復帰。プロデュースも務めた前日譚。
エイリアンvs.リプリーのシリーズは前作『…4』で新章に移ったが、本家リドリー・スコットはそんなものは継承しないのだ。
改めて本作を観直してみると、ロードショー公開時に感じたほど悪くはなかった。
しかし、科学者や技術者があまりにもバカに描かれていて興ざめしてしまうのは、初見時から変わらない感想だ。
大気の成分が地球と同じだからといって、菌や微生物などの分析もせずヘルメットを外してしまう愚行。
人類の創造主かどうかは別としても、明らかな知的生命体の形跡を発見した現場に居合わせて、専門外であっても興味を持たない科学者がいるだろうか。挙げ句に船に戻ろうとして迷子になるようなバカだから、未知の生物に気軽に触れて餌食になってしまうのだ。
そもそも地球で発見した遺跡の壁画から未知の惑星の正確な位置を読み取れるとも思えないし、不老不死なんてことも言い出す始末で、とにかくSFとしてはアナクロに感じるのだ。
ウェイランドが、その配下のアンドロイドが、未知の惑星のことを、未知の生物のことを最初からどこまで知っているのか…という疑問は、このシリーズのあるあるだけれど、研究者たちによる探査隊が舞台なのにその研究者たちより知っているというのは、どうかと思う。
映画の冒頭で登場する筋肉マンは、第一作で惑星LV-426にあった馬蹄型宇宙船の残骸で化石になっていた異星人と同種族のようだが、とても進歩した科学技術を持つ種族のようには見えない。そんな設定もアナクロだ。
では、この映画のどこが悪くなかったのかというと、アクションシークェンスの完成度だ。
プレ・リプリー編となる本作では、考古学者のエリザベス・ショウ博士(ノオミ・ラパス)が女性主人公として登場し、激闘を演じる。
エリザベスが自分の腹を切開してエイリアンを取り出す(胃とかの内臓や血管なんかも縫合しなくていいのか?)という驚愕のエピソードの後、筋肉マンとエイリアンとの三つ巴の戦いから、エリザベスの脱出作戦まで怒涛の展開が続く。
SFアクションホラー映画としてはこれがメインステージだから、その点において悪くない。
本作に現れるエイリアンはリプリーが退治してきたものとは異種のようで、寄生の仕方も違えば成長した形態もまるで違っていたが、エリザベスの中で育ち筋肉マン(エンジニア)に寄生したことで変異して、あのH・R・ギーガーのタイプが生まれたようだ。
キン肉マンたちは何らかの企みでこの惑星でエイリアンを養殖していたが、エイリアンによって滅ぼされてしまった。
きっと、キン肉マンの誰かがエイリアンを乗せたままの宇宙船で脱出し、LV-426に不時着したのがあの残骸と化石だったのだろう。なら、それはH・R・ギーガー型の新種が誕生する前だと思うのだが…?
ウェイランド社長の娘であり会社の幹部でもあるヴィッカーズにシャーリーズ・セロン、怪しいアンドロイド=デヴィッドにマイケル・ファスベンダーという、スターの起用はリドリー・スコットの力か。
ヴィッカーズは父親に認めてもらえておらず、デヴィッドに命令もできないという可哀想な立場で、惨めな最期を遂げるのだ。
船長(イドリス・エルバ)に「10分後部屋に来て」と誘ったその10分後は描かれていないが、Blu-ray特典に収められている未公開シーンには、ヴィッカーズと船長が心を通わせるシーンがあった。
ヴィッカーズの人物にスポットを当てたストーリー案もあったのかもしれない。