劇場公開日 2012年4月7日

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タイタニック(3D版) : 映画評論・批評

2012年4月3日更新

2012年4月7日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

もはや2人の愛を引き裂くだけのカタストロフには思えない

物語るより見せることの優位性へと傾き始めたCG超大作の起点、と揶揄されもした。こだわりを貫いた製作は遅れに遅れ、失敗すれば映画会社の命運さえ危うくなると糾弾された作り手の狂気は、世界中の観客の心を揺り動かすことで勝利した。数々の伝説に彩られた世紀のラブロマンスは、15年の歳月を経て風格さえ放つ名画に育っていた。昨今の大作の在りようと、こちらの意識が変化したせいだろう。現在の規格からすれば、破滅の絵巻を描く以上に、こんなにも純粋にメロドラマを物語ろうとしていたのかという驚きを、改めて抱かされる。

本作3D化は、ジェームズ・キャメロン執念の賜物だ。海底探査に始まり、ほぼ原寸大で再現された豪華客船の偉容、3等船室とVIPルームの対比、そして沈没のスペクタクル。体感性に富む画面構成に加えられた遠近や立体の芸術的センスには、15億円と60週間が費やされた。3Dキャメラで撮影されていない以上は、ここまで施して初めて3D映画なのだという真摯な姿勢は、2Dからの安直な3D変換に対する牽制になるだろう。3D化で磨きのかかった20代初めの男女優の肌艶や表情の初々しさが、ドラマティックな要素を強化している点も見逃せない。

船内を鉄砲水が襲い、科学の粋を極めた巨大な文明の象徴がコントロール不能に陥って遂には屹立(きつりつ)し、人々を真っ逆さまに振り落としていく。阿鼻叫喚の地獄絵は、もはや2人の愛を引き裂く単なる背景には思えない。安全神話を信じ切って、浮かれた者たちの欲望の終焉。100年前のカタストロフとその教訓を、3・11後のわれわれはようやく今、真に理解することになるのだろう。

清水節

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