「不妊症」ザ・レッジ 12時の死刑台 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
不妊症
ホリスは医者から男性不妊症と告げられ、悩んでいた。結婚して15年経った彼には2人の子供がいたからだ。事件の日、離婚も決意していたのだが、妻は浮気していたわけではなく、彼の弟の精子で人工授精して子を産んでいたのだった。しかも、彼女だけ子どもが出来ないことを知っていて、夫との愛を保つためにしたことだった・・・そんな精神不安定なホリスが交渉人としてギャビン(ハナム)の話を静かに聞く。
ギャビンはホテルの副支配人。アパートの同じ階の住民でもあり、従業員の友人という偶然もあり、シェイナ(タイラー)を雇い入れることにした。夫婦ぐるみの付き合いになるかと思われたが、シェイナの夫ジョー(ウィルソン)は狂信的とも思えるほどキリスト教原理主義の信者だった。食事に誘われても無神論者のギャビンと議論を交わす。どう見ても、作品のメッセージは宗教の否定のような気もする。「戦争が起こるのは宗教のせいだ!」とハッキリ言ってるし・・・
そんな宗教論議も面白いのだが、その夫に束縛されたシェイナを解放しようと、結局は不倫の関係に陥るギャビン。いつしかジョーが二人の姦淫に気づき、ギャビンが自殺しないと妻を殺すと脅してくるのだった。
結末は、約束の正午に飛び降り自殺という珍しいプロット。脅迫者の存在をギャビンがなかなか言わなかったせいもあり、警察もビルの向こうで妻に銃口を当てるジョーに気づかなかったのだ。ギャビンの同居人、クリス(クリストファー・ゴーラム)はゲイでHIV陽性。エイズについては深く関わってこないが、同性婚の問題なども興味深いところ。最後にはホリスも妻を赦し、食前のお祈りもナシにしてしまったシーンがいい。ただ、全体的に緊迫感が足りない。おとなしい映像だったのが残念。工業地帯の無機質な雰囲気のある、オープニングの背景映像は良かったのになぁ。