映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス : インタビュー
「ココリコ」遠藤章造&田中直樹×土田晃之×藤井隆、同期の結束深めた声優共演
シリーズ累計動員2256万人という、臼井義人原作人気アニメの最新作が公開される。「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス」(増井壮一監督)は、劇場版スタート20周年記念作品として製作された。“同期”として声優に迎えられたのは、デビュー20 周年のお笑い芸人たち。「ココリコ」の遠藤章造と田中直樹、土田晃之、藤井隆だ。今作出演をきっかけに、改めて仲間意識を強めたという4人が、自身と“しんちゃん”とのかかわり、そして役について語った。(取材・文/奥浜有冴)
妹ひまわりとケンカをした主人公・野原しんのすけこと“しんちゃん”は、突如現れた謎の男たちが差し出した「ひまわり姫をお預かりします」という紙に喜んでサインをしてしまう。次の瞬間、野原一家はUFOに吸い込まれ、見知らぬ星「ヒマワリ星」に到着。ひまわりが星のお姫様にならなければ、地球もヒマワリ星も消滅することに。地球を守るか、妹を取り戻すか、5歳児しんのすけは究極の選択を迫られる。
ひまわりのお世話係「イケメンDEイクメン軍団」役で出演した4人は、それぞれ現実でも父親の顔を持つ。4人の息子&娘の父・土田は「家に劇場版のDVDがたくさんあるんです。テレビではおバカなしんちゃんが、映画ではすごく正義感にあふれているんですよね。しんちゃんの勇ましい姿に、子どもたちが自分を投影させて見ているのが、横にいると伝わってくるんですよ」と目を細める。
2児の父・田中も強くうなずきながら、「そうなんですよ! しかも、大人が見ても泣いちゃうくらいグッと来る場面があって。初めて劇場版を見た時は、イメージとのギャップに驚きました」
愛娘がしんちゃんのギャグをよくマネすると話すのは、遠藤。「僕は娘のオリジナルだと思い込んで、『なんて面白いんだろう』と思って、テレビで何回か堂々と使わせてもらったんです。そうしたら、後からスタッフと相方に『しんちゃんのだよ!』と怒られて(笑)。クオリティの高さに感心しました」と述懐。「まさかプロがアニメからパクるとは(笑)」と述べる土田だが、自らもしんちゃんのギャグには一目置いていると同意する。
ひとり娘と一緒に見ることも多いという藤井は、子どもの頃の純真さを取り戻せると語る。「不思議と、しんちゃんと心の距離を近くに感じるんです。物語の中でしんちゃんの友だちになったような気分になれる。以前、生放送前にテレビでしんちゃんを見て、緊張をほぐして本番に臨めたという思い出もあります」
“イクメン”は、子育てを積極的に楽しもうとする男性をさす。買物や料理を親子で行うという藤井は、「何かを共にすることはもちろん大事ですが、ただ“一緒にいる”というだけでも育児だと感じています。日々の生活を子育ての延長と捉えながら、自分なりの方法で家庭を支えているつもりです」と穏やかに説明する。
公園に遊びに連れて行くことが多いという田中も、「友だちみたいな感じで、遊びながら物事を教えられたらいいなと。ただ、僕は動物がものすごく好きなんですが、子どもが犬を指差して『ワンワン』と言うと、『ジャック、ラッセル、テリアだ』と、いちいち種別まで教え込もうとしてしまうクセがあるようで……。よく嫁に制止されます」
週に1度は必ず早朝から娘の弁当作りをするという遠藤。「サプライズを仕込むのが楽しみなんです。おかずとご飯の間に、こっそりキャラメルとかを入れておく。見つけた瞬間の表情を想像するだけで、ワクワクします」とほほを緩ませる。
4人の中で最も父親歴が長い土田は、合理性も兼ねた子育て法を告白。「藤井くんと一緒で、日常=育児と考えてはいるんですが、何せうちは4人兄弟。全員にあれこれやり続けるのはとても無理なので、自立心を養うためにも“お風呂掃除1回50円”といった感じのルールをいくつか設けています。欲しいものがある時なんて掃除の取り合いですよ。お小遣いもあげ方次第で、親子双方がうれしい結果につなげられると学びました。ある種、家庭内の歩合制ですね」
アフレコ体験については、それぞれ初めてではないにしろ、本業とはちがう難しさを感じていたようだ。遠藤、土田、田中は滑舌に苦戦。元々苦手意識があったと明かす遠藤は、満足できた時に限ってとり直しをお願いされた、と苦笑い。そして4人が声をそろえるセリフも大変だったと明かす。「そこそこ年齢のいったおじさんたちが、『せーのっ』って言われながらとっていました(笑)」
しかしその地道な努力の積み重ねのおかげで、いつの間にか仲間意識が深まり、魅力的なキャラクターが完成した。ふだんは芸歴を考えないというが、今回“20周年”というくくりで集まったことで活動を見つめ直す、いいきっかけになった、と口をそろえる。藤井は、「結束力が高まり過ぎました」と強調。それを聞いた3人も、深くうなずく。見えない4人の絆が、作品への期待感を高めてくれた。