「チマチマとアベックで銀行強盗に励む主人公に、これはSF作品なのか!と絶句」TIME タイム 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
チマチマとアベックで銀行強盗に励む主人公に、これはSF作品なのか!と絶句
もし、過ぎ行く時間というものが、もっと短くてあっという間に終わってしまうものなら、恋愛や人間関係を築く時間も惜しくなり、死んで行く事にもっと意味を求め出すことになるでしょう。この映画の舞台を、加齢遺伝子が、人の年齢を25歳でストップする、という、未来社会。文字通りの、若者だけが住む世界に変わってしまうのです。
本作のルールを説明すると
●25歳になると腕に「残り時間を示す時計」があらわれ、成長が止まります。
●不思議なことに時間が通貨となっていること。しかも変動相場制なのです。
●あらゆる支払は寿命の時間を削ることで精算できる仕組み。
●「時間」はお互いの腕を近づけることで自由に分け合うことができるのです
このシステムだと、女性Aは、男性Bに、30秒とか、あるいは一日とかを、プレゼントすることができるのです。人々は、自分に残された時間を、自由に取引でき、盗むこともできるようになっていたのです。その結果事業収入により多くの寿命時間を独占することもできました。肉体年齢は25歳でストップするものの、寿命は無限大にも伸ばすことができたのです。
しかしそれは同時に、痛ましい苦痛を生みます。富裕層となり、いくつになっても死ねないというのは、それはまたそれで人生の苦しみから逃れられないという悩みを生んでしまうのでした。だから時間を持ちすぎた富豪が死を願望して時間を譲ってしまうという最初の掴みは良かったのです。
「時間切れ」という仕掛けは前半のサスペンスを盛り上げてくれました。時間が貨幣価値をもつというアイディアは面白いと思います。だけど時間の希少性が増す分、その「時間の価値観」というテーマを描く人間ドラマとしては、設定を活かしきっていません。
特に後半は、そんな設定などお構いなく、時間所有の貧富の格差をうめるため主人公が銀行強盗にのめり込んでいくところに興ざめしてしまいました。これだけの設定を見せられて、貧富の差で寿命あの搾取が行われる不条理な世界。それを見せ付けられたなら、観客としては、もっと根本からひっくり返していくストーリーが見た意図思うのが
自然でしょう。そしてどうしてこの世界が何故つくられたのかを突き止めたくなるはずです。けれども90分と短編に仕上げた本作では、そんな観客の疑問を突き放したままで終わってしまいました。
時間を管理する当局が主人公の持つ時間を不当所得と見なして逮捕に向かうなかでのアクションシーンは、なかなか迫力がありました、けれども本作の鍵は、やはり人生が25年しかなく、それも消費によってより短くなっていく刹那と、少しでも時間を節約しようとより時間を大切に使う、人々の価値感の変化ではなかったかと思います。
一瞬一瞬毎に、死へと一歩一歩近づいているという、もっとも原則的な事実を、観客に思い出させることが本作の本来の目的だったとしたら、やはり描き足らずなんですね。
物語は、ジャスティン・ティンバーレイクの演じる主人公ウィル・サラスは、殺人の容疑をかけられます。富裕層のエリアに逃亡したウィルは、とある無慈悲な金持から、その娘シルビア(アマンダ・セイフライド)を人質にとってさらに逃走を続けます。けれども直ぐに2人はパートナーとなって銀行を襲うというもの。シルビアは出会ったときからウィルに気がありそうな前振りを見せますが、やや唐突な感じがしました。
それにしてもアマンダ・セイフライドは、前作「赤ずきん」に引き続き、目がくるりとした愛らしさが素敵な女優さんです。しかも脱いだらとてもセクシーでした。
クールな夜景と昼間の情景のハイコントラストは、なかなかシャープな画作りだと感じました。