劇場公開日 2012年2月17日

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「設定を活かし切れていない脚本が全て」TIME タイム アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5設定を活かし切れていない脚本が全て

2021年5月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

設定はそこそこ面白い。金の代わりを寿命がつとめていて、秒単位で簡単に他人や機械とやり取りができる。高級自動車は 59 年、タイムゾーンを越える料金が1ヶ月、コーヒー1杯が4分といった具合で、他人から強奪する事件なども多発しており、寿命の残り時間が0になると即死する。自分の残りの寿命は 13 桁の数字で腕に常時表示される。◯◯◯年◯◯月◯◯日◯◯時間◯◯分◯◯秒で 13 桁だから、表示される最大値は 1000 年のはずだが、物語には 100 万年とかいう長大なものまで出てくるので、システム的に問題がある。また、人間は 25 歳以上歳を取らないという謎の設定がある。恐らく生理的な欲求が衰えないようにという配慮であろう。

冒頭で主人公母子が登場するが、どちらも 25 歳を超えているので、見かけは同い年に見える。社会は階層化されて、主人公のような最底辺のスラムの人間は、毎日1日分の寿命を労働で稼いで生き延びるしかないが、最上級の階層は、下層の人間を追い詰めて税などとして奪った寿命で贅沢な暮らしをしており、持っている寿命が 1000 年を超える者までいる。冒頭で、主人公はある経緯によって 100 年もの寿命を手にするが、それを奪おうとする集団から襲撃されたり、寿命を賭けてのギャンブルを行ったりと波乱万丈の展開を経て、この仕組みそのものの破壊を目的にするようになるのだが、いろいろと雑なところが目に余る。

上流社会の男の娘をさらって逃げる時に、階層(タイムゾーン)を越えて自分の家まで戻るときに、通行料が足りないのではとか、自分の足で走ったこともない上流階層のお嬢様がハイヒールを履いた格好で元気に走り回ったり、住宅も銀行もセキュリティーが甘過ぎるし、最下層では寿命を奪い合う暴動が起きていても不思議でないのに秩序は守られているし、主人公はどんな状況でも拳銃の弾が当たらないと言ったご都合主義が目に余る。

社会の仕組みを壊そうと思った者が 50 年もの過去に一人もいなかったというのも奇妙な話であるし、そもそも仕組みを変えてからどんな社会を作りたいのかといった話が何も見えない。50 年くらい前には、自分の不遇を社会のせいにして、地に足のつかない革命ごっこで自分の人生を無駄にした幼稚な馬鹿者が日本にも沢山いたが、そいつらとこの主人公は本質的に何の相違も感じられない。

設定だけは面白いが、その面白さが全く活かされていない映画であった。映画館で見ていたら、金を返せと言いたくなったに違いない。いっぱい出てくる敵たちの結末も、それぞれあっけなさ過ぎて拍子抜けした。脚本が悪い映画はいくら撮影や演出を頑張っても良くなる可能性はないという話が思い出された。いくらでも面白くする方法はあっただろうにと、残念な思いにかられた。
(映像4+脚本1+役者3+音楽2+演出3)×4= 52 点。

アラ古希