「韓国の裁判」イテウォン殺人事件 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国の裁判
恋人とハンバーガーショップに来ていた大学生のジュンピルがトイレに立ち寄ったとき、背後から何者かに首など9ヵ所を刺されて死亡した。
容疑者はCID(アメリカ陸軍犯罪捜査司令部)が身柄を確保した韓国系アメリカ人のピアソン(グンソク)18歳と、父親に付き添われて出頭したアメリカ国籍のアレックス(スンファン)17歳。互いにアレックス、ピアソンが殺したのだと主張する。
どちらが怪しい?しかし、絶対にどちらかが犯人なんだということは論理的に検証しても間違いない事実。韓国語が全くわからないピアソン。そして韓国語は完璧ではないアレックス。パク検事(ジニョン)とのやりとりの間にはCIDの通訳が入り、通訳を通さないと証言は認められないという。アレックスの証言の曖昧さと、ピアソンの経歴からくる怪しさ。パク検事はアレックスを起訴することになり、公判が始まる。ピアソンは凶器の持ち主なので、証拠隠匿などの罪に問われた。なぜか同じ被告席にいた・・・これが韓国の裁判か。
裁判において急展開するわけではないが、トイレでの現場検証があったときパクの中に疑念が生ずる。客観的には、アレックスの証言によると狭いトイレでは人が通れなくなるという点が認められる。しかし、ピアソンの迫真に満ちた再現には真犯人ではないかと思わせるものがあったのだ。
数か月後、アレックスの無期懲役刑の判決が下されるが、弁護側は上告。すると証拠不十分として無罪判決を受けてしまうのだ。ピアソンも1年の懲役を受け、やがて釈放。犯人不在のまま裁判は結審する。怒りの矛先をどこに向ければいいのか?被害者の父親はバスの運転手だが、家庭は貧困生活。遺族の悲しみは計り知れないものがある。絶対にどちらかが犯人なのに、犯人がいない判決なんて・・・
この映画公開がきっかけとなり、実際のイテウォン殺人事件は12年ぶりに捜査が再開されたことが話題となった。真相はやぶの中だが、遺族たちのためにも解決してほしい事件だ。この遺族の悲しみをもっとクローズアップさせれば最高の映画になったかも。