TATSUMI マンガに革命を起こした男のレビュー・感想・評価
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紙芝居と言ってもいい映画ではあるが・・・
これはあくまで誉め言葉である。特殊な表現形式で劇画と言う表現方式を世界に向けて発信した極めてユニークな映画である。この点は大いに評価せねばなるまい。ちゃっかりご自身の作品を抱き合わせで3作も載せちゃっているがこれはこれでご愛敬でしかも効果的でもある。まさに何でもござれの映画だ。でもこれは好き・・。漫画、劇画マニアには是非見て貰いたい。
劇画
劇画道
まだ漫画が子供の読み物だった時代、大人が読める漫画を描き、“劇画”というジャンルとその言葉をも産み出した漫画家、辰巳ヨシヒロ。
その半生を氏が産み出した劇画タッチでアニメ映画化。一部(ラスト)、ドキュメンタリー。ナレーションも本人が担当。
氏の作品も見たくなってくる。短編5作品を劇画アニメーション化し、交えながらの構成。
劇画アニメンタリー×オムニバスという異色作ながら、一粒で二つ三つの味。
毎度毎度、恥ずかしながら、氏の事は初めて知った。
異端の漫画家ではあるが、志のきっかけは多くの漫画家と同じ。
漫画の神様、手塚治虫への憧れ。
直接本人と会い、漫画を描くよう勧められた事も。
多くの漫画家に影響を与え、手塚治虫の偉大さも再確認。
劇画を描いてる漫画家と言うと勝手なイメージで無骨な人物を想像するが、至って穏やかな性格。
早くから漫画を描き始め、雑誌に初掲載。
漫画家としてデビュー。
当初は周りと同じく子供漫画から。
好評や泣かず飛ばず、もう漫画を描きたくないほどのスランプ…模索しながら自分のスタイルを確立していく。
劇画という漫画の新たな表現には、憧れた手塚治虫も嫉妬したほどだと言う。
氏の半生の合間合間に挿入される5つの短編作品。
それらは今見てもインパクト大、当時はさらに衝撃だった事だろう。
漫画=面白い、笑えるの概念に縛られず、氏が描くのは、社会の底辺で生きる人々の悲哀、エゴや欲、エロスなどを陰湿なタッチで抉る。鬱気分、それ所か、戦慄すら感じる。特に、原爆親子のエピソード…!
何だか『笑ゥせぇるすまん』を見た時の感覚。いや、これは逆。『笑ゥせぇるすまん』が氏の作風に影響を受けているのだろう。
監督は、シンガポール出身のエリック・クー。
シンガポール作品ながら全編日本語。
リスペクトと才気は勿論、どうして日本人が日本映画として作らなかったのかと一抹の嫉妬すら覚える。
氏の作品も、そして本作も、かなり異色でクセのある作風なので、好みは分かれそう。
しかし、全く色褪せぬ。
切り開き、確立させた、その劇画道。
自身の半生の独白と作品世界が交錯した世界観に惹き込まれた
予想以上に面白かった
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