「基本は大作邦画にありがちなダメ映画、だが見るべき点もある」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN メンチ勝之進さんの映画レビュー(感想・評価)
基本は大作邦画にありがちなダメ映画、だが見るべき点もある
わが国では、ここしばらく大作娯楽映画というとテレビドラマの番外編か、さもなくばマンガ/アニメの実写化と相場が決まっており、かつそれらは
・ロクに芝居もできないモデルあがりの役者未満を主要キャストに配し
・他の作品ではちゃんと芝居をする脇の役者も客をバカにした演技で
・監督はろくに芝居の指導もせず/できず
・脚本は話の辻褄が合わないわりに違和感のある説明セリフばかり
・クライマックスは「若造の自分勝手な人生論」をだらだら演説してテンポが悪く
・原作をムダに改変してファンからそっぽを向かれ
・エンディングにはミスマッチな J-POP を流す
・でも美術や CG は制約の範囲内でがんばりました!
というのがお定まりの路線ですが、本作もおおむねその感じです。
加えて、この作品に関しては、撮影と録音も何かヘンでした。単にヘタなのかな?冒頭からいきなり、ふつうのシーンのはずなのに口パク感とでもいうか、映像と音声があってなくてモノローグを当ててるような違和感がありましたからね。
ただ、この映画に関しては従来のダメ大作邦画と異なり、一点だけよい点がありました。
クライマックスのアクションシーンの盛り上がりだけは評価してよいと思います。
まあ、アクションの間にちょいちょい挟まれる三浦春馬の大根演技と長谷川博己のふざけた芝居には呆れるほかないし、話題の立体機動ですか、飛行シーンは予算の関係か映像的なバリエーションがなかったのは致し方ないのでしょうけど、そこを割り引いても結構テンポがよくてなかなかのものだったんじゃないですかね。
まあ、私が「原作(ほとんど)読んでない派」だったのもよかったのかもしれませんけど。
というのは、原作にある(らしい)展開で素直に驚きましたんでね。覚醒だか暴走だかの。
まあ、そこに至るシーンはもっさりしてて説明くさく、もうちょっとハサミを入れたほうがいいとは思いましたが(Blu-Ray や DVD ではぜひそうすべきです)、「若造の自分勝手な人生論」を演説し始めたりするのに比べればじゅうぶん許容範囲内だと思います。
というわけで、序盤中盤とややガマンしながら鑑賞してたのですが、終盤に面白い山場があったことで、意外に鑑賞後の印象は悪くなかったです。
これまでのマンガ実写映画の「クライマックスが一番かったるい」のに比べれば、ずっとマシですもん。
もちろん 100 点は上げられませんけど・・・「三割くらい金返せ」の感じかな。
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ちなみに、原作が好きでもない私が本作を見に行ったのは、映画評論家の町山智浩さんが脚本として参加している、という、その一点においてです。
が、全然その甲斐はありませんでしたね。相変わらずの渡辺雄介クオリティ。
町山氏がこれまで批判してきた邦画の欠点が、この作品にはそのまま温存されてしまっています。彼も自覚はしてるでしょうけど、立場上はいいづらいかな。
いずれにせよ、今後は町山氏の本を買うのは一切やめることにしますし、彼と一緒になってダメ映画をぶった切ってきた柳下毅一郎氏をはじめ、映画秘宝勢がこの作品をどう評するか、しばらく注視したいと思います。
「オトモダチ」という壁にちゃんと立ち向かうかどうかをね。