「予想どおり」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
予想どおり
漫画の世界を実写化するのに、その世界感が観客になじまなくても、仕方ないことを前提として撮られる邦画が増えた。制作者側の欺瞞だよな。
やっぱり樋口さんは監督やっちゃダメなんじゃないの?ドラマをそっちのけでとにかく得意の特撮に持って行こうとするんだから。人間ドラマが描けてこその特撮なのに…。
以下、この映画のダメなところ。
●こんな異世界の設定なんだから、冒頭で丁寧に描写してほしかった。さっさと説明的に終わらして特撮アクションに持って行っても、観客は置き去り。そもそも日本人キャストって時点で違和感満載なのだから、何故に東洋人なのか納得のいく設定があってもいいんじゃないか?三浦春馬をエレンって呼ばれたら、学芸会にしか感じられない。
●人類の命運をかけた命がけの戦いのはずなのに、みょうちきりんな三角関係を入れてきて、ドラマの主軸がブレている。
●エキセントリックなキャラクターにリアリティがなさ過ぎてついていけない。監督は漫画のキャラそのものの芝居をつけているが、根本的に芝居がわかっていない。
●ヨーロッパの田舎町デザインが日本人キャスト・エキストラに合っていない。軍艦島のロケーションと差異がありすぎる。根本的にこの世界のプロダクションデザインのコンセプトはワケがわからない。
●巨人のデザインは失敗では?原作ほどの異形がない。みょうに腕が細かったり、顔が大きいとか、目玉が大きいとか。本来の人間の不気味さを出すという狙いが感じられるが、失敗してると思う。人間を食う巨人のアップが内トラと思えるような普通のオッサンの顔じゃあ、お笑いにしかならない。人間の顔をまんま生かすにしても、撮り方を工夫しないと恐ろしく感じない。
●空中を飛び回るカットは複雑な事が出来ないのか、ヨリでごまかすカットばかり。スパイダーマンみたいな金かけたCGが出来なかったのか?臨場感なし。
●エレンが胃の中に落ちたシーンを作ったのは一番の失敗。制作者のセンスのなさ、判断能力のなさを物語っている。これはある意味、やっちゃいけないんだ。原作ではこの場面は回想として見せている。その構造を映画製作者は理解していないのか?
エレンが巨人に食われた後は見せちゃいけないんだ。主人公が死んでしまったと思わせないとインパクトがなくなる。あんな胃の中のシーンを見せちゃうと、ああ、主人公は死なずにこの後も活躍するんだな…と思われるでしょうが。
エレンは死に、仲間たちは巨人に殺され、救いようのない絶望的状況に追い込まれる…からのエレンの巨人の復活。このように描かないとワクワクしないじゃない。
他にも言い足りないけど、そんな感じ。
樋口さんは「のぼうの城」みたいに共同監督か特撮監督の方が面白い映画が作れるような気がする。