光のノスタルジア
劇場公開日:2015年10月10日
解説
世界中から天文学者が集まるチリのアタカマ砂漠と、そこにとどめられたさまざまな「記憶」に焦点を当てたドキュメンタリー。チリ北部、太平洋とアンデス山脈の間を走り、標高3000メートルに位置するアタカマ砂漠は、湿気や大地の揺らぎが少なく天文観測に適しており、世界中から天文学者が集まる場所として知られている。一方で、古代人のミイラや探検者、採掘鉱夫たちの亡がらがいまも手付かずに残っている。生命の起源を求めて天を仰ぐ学者たちのかたわらで、行方不明の肉親の遺骨を探して地を掘り返す人々がいるアタカマ砂漠の姿を、壮大な宇宙の映像とともにとらえた。2011年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀作品賞を受賞(映画祭上映時タイトル「光、ノスタルジア」)。
2010年製作/90分/フランス・ドイツ・チリ合作
原題:Nostalgia de la luz
配給:アップリンク
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2022年4月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ー チリ出身のパトリシオ・グスマン監督が、世界中から天文学者の集まるチリ・アタカマ砂漠の美しさと、独裁政権下に弾圧の地として用いられた負の歴史の両方にスポットを当てるドキュメンタリー作品。ー
◆感想
・アタカマ砂漠の上空の美しき澄んだ星空と、ピノチェト軍事政権下に捕らえられた政治犯の遺体の対比。
・そして、高地で乾燥しているアタカマ砂漠に世界から集まる天文学者、考古学者の姿と共に、肉親の遺骨を探す人々が語る言葉。
<2つの異なる時間が祖国を愛するパトリシオ・グスマン監督の手法により交錯し始め、観る側に様々な事を問い掛けてくる哲学的なドキュメンタリー作品である。
美しきアタカマ砂漠の風景、夕景、澄み切った星空は忘れ難い。
故に、そこから掘り出されるジェノサイドにより命を失った人たちの亡骸は悲しい・・。>
2021年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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グスマンのこのシリーズは、ネット配信で『真珠のボタン』を既に観ていたが、
やはり、あの詩的な映像美はスクリーンの大きな画面で観ると、より一層とあの世界へと引き込まれる。
遥か昔の宇宙の起源を探求する天文学者、地球の歴史を地層から探求する考古学者、そして、ピノチェト政権によって虐殺された家族の遺体を探す女性達。
この「過去」に起こった事を探し求めている人達のインタビューで構成されてはいるが、同じチリのアタカマ砂漠にて「過去」の断片を探している人達とは言っても、天文学者が話していた通り、権力の暴力によって殺された家族の遺体を探す人達の行動と、宇宙の探求を比較するなど、到底出来る訳がない。
青く澄み切った空の下、乾き切った空気の広大な砂漠において「過去を探す」という文脈で、かなり強引にリンクさせているのは明らかなのだが…
あの映像美によって巧みに構成されると物の見事に引き込まれてしまう。
当時のピノチェト政権下の状況については、もっとリアルな証言や映像などで、その理不尽な実情を良く知らない人達にも伝わるようなフッテージはあった方が良かったと思うが、遺体の掘り起こしの実録映像では、標高が高く乾燥し切った土地ゆえに、腐蝕があまり進捗してない為、殺された生々しさが無残にもリアルに伝わる遺体が写し出されていた。
そのあまりにも悲しく惨すぎる映像は、あの虐殺の酷さを伝えるには充分過ぎるほどだったかもしれない。
あまりにも密度が濃くて、2時間以上は観ていたような体感だったが、終わったら1時間半しか経過していなかった。
まさに「記憶はあたかも、重力のような力で私たちの心をとらえ続ける」そんな映画であった。
映像がとにかく美しかった。
広大な宇宙から比べれば人類の歴史も砂漠もちっぽけだけれど、個人から見れば一瞬の出来事も砂漠も宇宙よりも広い。
2016年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
何だか、これはSF映画の世界にでも迷い込んでしまった錯覚を覚える作品だった。
そして、小学生の頃の星空を飽きずに眺めていた子供時代に帰還した感じ。
カメラが映し出す星空を見上げるのは、何とも夢見心地と言えば良いのかなぁ?
最近では、プラネタリュームなどへも行かないし、ゆっくりと星空も眺めない。
そして、私は天文学に無知なので、チリの山岳地帯にこれ程の最新で、最高の設備の整った天文観測所が存在していた事すら知りませんでした。そしてここに世界各国から多数の天文学者が集結している事も全く知りませんでした。
その一方で、この作品で、独裁政権下で愛する家族を失った人々が、これらの砂漠地帯で今尚遺骨探しに明け暮れていると言う現実が描かれている。
その宇宙観測と遺骨収集と言うかけ離れた現実を目の当たりにすると、不思議とこれらかけ離れている事が一体化していると言う気持ちが生まれる。
人間の争いや、憎しみって、本当はとても小さい事に気付かされるのだ。
宇宙の歴史と、時間の長さを考えると、人の一生は余りにも短い。
そしてこの宇宙空間から考えると情けなくなる程ささやかで、小さいエリアで人は生きている。この小さな地球の片隅で、日々私達は取るに足らない事で互いの命を奪い合う。でもその命は、1度しかない人生でとても貴重な体験なのだから、殺し合う事程愚かしい事はない。
天文観測所のドキュメンタリー作品だと考えていたら、これは予想に反していた作品でしたが、決して観て損はない作品だと思いました。当たり前の事だけれども一人一人の小さな命もみんなこの広い宇宙の一員なのですね!みんなが一つに溶け合って宇宙が出来上がっているってとても神秘的で大きな感動でしたよ!