「良い意味で期待が裏切られました」マレフィセント 幸之助さんの映画レビュー(感想・評価)
良い意味で期待が裏切られました
「マレフィセント」を鑑賞するにあたり、これまで観ていなかった「眠れる森の美女」から入ったんですが、これがまず酷い。
当たり前ですが、所謂「白馬に乗った王子様待ちのお姫様」な話でしたので、現在の作風に染まりきっていて、且つ男視点で西洋文化圏の生活に馴染みのない自分には不向きな映画でした。
付け加えると、やりたい放題の妖精トリオが凄くイライラしていました。
画はとても素晴らしかったんですが、ストーリーがこんな印象でしたので公開直前でかなり期待値が下がっていました。
それが良い意味で裏切られた状態でしたので、非常に良かったです。
「眠れる森の美女」の裏話が語られるのかと思いきや、タイトル通りマレフィセントが主軸で話が進んでいきます。
幼少期に出会ったマレフィセントとステファン王。
互いに恋に落ちて真実の愛を誓うも、欲に溺れたステファンが原因で疎遠になり、早々にこれまで続いてきた「真実の愛」を大否定。
時が経ち成長した二人は再会し絆を取り戻したかに見えましたが、欲に抗えなかったステファンは、マレフィセントを睡眠薬で眠らせた上に、彼女の背中にあった翼を切り落とし奪い去り、それを手見上げに王座にのし上がるという暴挙に。
彼女に残ったのは深い心の傷と歩くようになるための杖、そして自分の翼の代わりになる鴉。
純真無垢だったのはオーロラ姫ではなく、マレフィセントだったという罠。
そしてオーロラ姫の誕生。「眠れる森の美女」の冒頭に。
愛が憎しみに変わり、その愛が深ければその怒りと憎しみは絶大であり、復讐の為にオーロラに呪いをかけるマレフィセント。
裏返しとして、自分で呪いを解く方法に「真実の愛」の条件を加える。
呼ばれてないのに誕生パーティに列席していた妖精トリオ。彼女達が要らない子になった瞬間でもあります。
ここから更に新たな物語に。
ダメ妖精トリオが子供を育てられるはずもなく、マレフィセントが隠れてオーロラを見守り続ける事に。
オーロラが成長していく姿に、元々純粋だった彼女の心に愛情が戻り、傷が癒されていきます。
翌々思いましたが、この妖精トリオは育児放棄や大人になりきれない大人達を象徴している様にも見えますね。
復讐の後悔から呪いを解こうとするも叶わず、16歳の誕生日。
オーロラとフィリップが出会い恋に落ちますが、それだけ。
唯一の救いの道とマレフィセントは奮闘しますが、まだ愛を育んでいない彼らにはどうすることもできず、王子のキスでは目覚めない。王子なにも悪くないですが、要らない子に。
結局目覚めたのはマレフィセントによるキス。
今回語られた「真実の愛」とは男女のそれではなく、子を人を育て見守るという親子の愛。
未だ人の親ではない自分に推し量れる感情ではないですが、流石は6人の子供の親アンジェリーナ・ジョリーは見事に演じきっていた様に見えました。
この後狂気にまみれたステファンが出張るんですがそこはもはや蛇足。
「アナと雪の女王」では姉妹の愛を、「マレフィセント」では親子の愛を。
次の「美女と野獣」では何を語るんでしょうか。楽しみです。