「韓国製重厚サスペンスはやっぱり好物ジャンル」哀しき獣 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
韓国製重厚サスペンスはやっぱり好物ジャンル
「チェイサー」のナ・ホンジン監督が再び放つ、バイオレンス・サスペンス。
ロシア・北朝鮮と接する中国・延辺朝鮮族自治州。
朝鮮族のタクシー運転手グナムは、仕事を解雇され、博打の借金も膨らみ、韓国に出稼ぎに行った妻から音沙汰も無く、悶々とした日々を送っていた。
そんな時、闇社会の男から請負殺人の仕事を依頼される。
借金返済の為、妻を探す為、グナムは承諾し、韓国に密入国する…。
傑作の誉れ高い前作「チェイサー」はストレートな面白さが魅力だったのに対し、警察や闇組織が入り乱れ、構成が複雑化してしまったのが残念。
延辺朝鮮族自治州とか朝鮮族とか社会背景も日本人には馴染み薄く、少々取っ付き難い印象も否めない。
しかしながら、罠にハメられた男の逃走劇をスリリングに活写、グイグイ見せていくナ・ホンジン監督の力強い演出はやはり本物だ。
痛々しいバイオレンス・シーンや走る描写も健在。
この“走る”というのがナ・ホンジン監督の特徴にも思え、どん底から逃れようとする登場人物の叫びを表している気がする。
今回の主人公グナムもどん底の人生を生きている。
さらに罠にハマり、孤軍奮闘する中、どんどん狂気じみていく様は、タイトル通りの“哀しき獣”。
暴力の恐ろしさ、人生の歯車が狂い堕ちていく哀しさに戦慄する。
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