「今まで出会ったことの無い映画」ニーチェの馬 人尽天さんの映画レビュー(感想・評価)
今まで出会ったことの無い映画
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正直すべて見終わるまで3日かかった。見ようと思って腰を据えても気付いたら寝てしまっていた。でも、それでも見たい!と思わせる不思議な引力がある映画。いやむしろ見なきゃいけないような気にさえなっていた。
ただ、すべて見終わって、色んな方のレビューをみて、自分は凄い映画を見たのだと身震いがした。
これほどの映画があったのだろうか。これまでのストーリーや役者ありきだった映画観が覆さるような体験。
淡々と繰り返される日常。残酷と思えるほどの。しかし、それでも人は生きていく。笑顔も娯楽も、思想や観念、生きがいすらない、ただ生きていくための無駄を一切ない剥ぎ取られたルーティンワーク。しかしそこに生を肯定し力強く生きる人の姿をみる。
ここまで無駄なくかつ強烈に人の生き様を描いた映画はないのではないか。
これまで起きてこなかった思わぬことが起き、少しずつ一刻一刻終わりが近づいていく。しかし、そこには静寂と、絶望の中にかすかにでも次に命を繋ごうとする底力がある。
生きようとする人間はほんとうに強いことを、この映画で見させられる。
何も飾らず、何も見せない。ただ流れる人生の一片を静かに見守っているだけだが、しかしこれほどまでに深く心に遺す、まさに名作。
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