「家族それぞれの思いを秘めたゴングが、今、鳴った…!」ウォーリアー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
家族それぞれの思いを秘めたゴングが、今、鳴った…!
疎遠だった兄弟が総合格闘技のファイターとしてリング上で再会する…。
2011年のアメリカ公開以来ずっと気になってたこの作品、4年の時を経てやっと日本上陸!…と思ったら、未公開。
「ヒックとドラゴン2」に続き、何故未公開なのか納得出来ない力作!
「百円の恋」「激戦 ハート・オブ・ファイト」と格闘技映画の傑作続くが、共通して言えるのは、人間ドラマがしっかり描かれていなければ試合シーンの興奮も感動も無い。
その点、本作は、先の2本の例に漏れず、完璧!
アメリカ海兵隊だった弟トミーが帰郷する所から始まる。
元ボクサーだった確執ある父にトレーナーを頼み、大金を得る為、総合格闘技出場を決意する。
彼がそこまでしてリングに上がる理由は…?
海兵隊時代の苦い過去が関係していた…。
高校教師の兄ブレンダン。
父と縁を切り、妻娘と幸せな家庭を築いていたが、娘が難病に侵されている事を知る。
高額な医療費を稼ぐ為、妻に内緒で夜な夜な総合格闘技の試合に出場。
彼にもまた、リングに上がる理由があった…。
父パディの存在も印象的。
酒のせいで兄弟から見放され、酒を断ち、息子たちとの距離を縮めようとするが、拒まれる。
自業自得と言ってしまえばそれまでだが、枯れた佇まいは見ていて切ない。
遂にリング上で激突する兄弟。
どちらも決して負けられない、譲れないものを背負っている。
見守る父もどちらか一方だけを応援する事は出来ない。
それぞれの思いを胸に、家族の戦いの無情なゴングが鳴った…。
戦う兄弟に、出演作相次ぐトム・ハーディとジョエル・エドガートン。
例えるなら、弟ハーディは何処か哀しみを帯び、兄エドガートンは何処か優しさを滲ませ、両者共、自身のキャリアに残るであろう、文字通り体を張った熱演。
オスカーにノミネートされた父ニック・ノルティの名演も言うまでもなく。
撮影中に骨折したほどの壮絶な試合シーンは手に汗握る。
演者の力演と戦う理由が明確だからこそ、熱い感動が込み上げる。
日本劇場公開・未公開の基準はアメリカでの成績や質や日本人受けで決まるのだろうが、少なくともいずれも、「チャーリー・○○○○○」なんかより間違いなくクリアしている。
ひっそりとでもいいから劇場公開して欲しかった。