「健気な父親の涙。」ファミリー・ツリー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
健気な父親の涙。
仕事一筋のお父さん方にとって、かなり頭の痛くなる物語だ。
家族の為に身を粉にして(よくいう台詞)働いた結果がコレとは。
だから奥さんに家を任せきり…なんていうのはダメなんだよ、と
鑑賞者だとアッサリ言えるんだけど^^;本人には辛い一撃になる。
楽園(だと思われがちの)ハワイで、サーフィンなんて何十年も
やってねぇよと冒頭から文句を垂れる弁護士のマット・キング。
そんなことより今の彼には、難題が二つも圧し掛かっている。
先祖代々の広大な一等地を売却するか否かに頭を悩ませる中、
妻がボート事故で昏睡状態に陥ってしまい助かる見込みはない。
ついてはその妻の生命維持装置をいつ外すか、
二人の娘に(特に下の娘)それをどう説明するか、ということだ。
更にそれに加え、なんと妻が浮気していたというではないか!
えーっ!なに、しかもそれを知らなかったのはオレだけ!?って
いう、急転直下の困難を右往左往でオロオロ走り回るクルーニー…
可哀想なんだけど、これがまた抜群に巧い!(涙が出るほど)
映画的とかドラマ的というよりも、実際に起こりそうな事件を
淡々と掘り下げながらググーッと人間の深い部分をえぐり出す
巧い演出だと思うし、それに堅く応える彼と娘たちがまた健気。
妻が浮気した理由は…定かではないが、忙しい夫より愛人へと
気持ちが傾いてしまったのだろう。ところが相手はそうじゃない。
こんな告白を聞いて、もし実際に彼の立場だったらどうだろう。
ぶん殴るくらいじゃ気が済まない、それこそ血で血を洗う抗争劇
(あー飛躍しちゃった^^;)になっても不思議ではないこの展開に、
彼はなんとも冷静な「お願い」をする。まぁそれが後で効くんだけど…
愛するものを奪われるのは辛い。
結婚相手であろうと、土地であろうと、大切なモノは、
自分がそれをどう扱うかでその価値さえも変わってくるものだ。
何が正しくて何が間違っている、という物差しだけでは測れない、
難解で辛い決断をしてそれを乗り越えた先には、だからどうか、
せめて心安らぐ家なり家族なりがいて欲しい…ものだと思う。
彼が苦しんだこの月日を、ラストの団らんが温かく包みこむ。
娘達にこの父親は、どんなふうに映っただろうか。
私なら(過去はどうあれ)胸を張って、私の誇りと言ってあげたい。
時に滑稽で時にシリアスな表情を見せるクルーニーは素晴らしい。
結婚するのか分からないけど^^;いい父親になれそうな感じねぇ。
(シド役のN・クラウスはいいわ~。存在価値のないところも最高v)