「哀しみを乗り越える家族はストロベリー&モカチップアイスの様に苦くて甘酸っぱく複雑な愛情の味がする」ファミリー・ツリー Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
哀しみを乗り越える家族はストロベリー&モカチップアイスの様に苦くて甘酸っぱく複雑な愛情の味がする
今年のゴールデングローブ賞で作品賞や、アカデミー賞でも脚色賞を受賞するのも頷ける、とっても心温まるお話しで、大きな感動がドンと胸に飛び込んできました!
ストーリーとしては、或る日突然の事故で、家族が重体になるお話は、普通は暗く重い話の筈なのだが、舞台がハワイという土地柄のためか、悲壮感ばかりが前面に出て来ないばかりか、辛い苦渋の選択を迫られる家族のお話でも、決してネガティブでは無く、問題解決へと、家族が一丸となって努力を重ねてゆくお話を観るのは、どんどん気持ちが爽やかになっていくのだ。壊れかけていた家族は、最悪の事故をきっかけにして、逆に家族の再生へと絆を取り戻していく。こんな嬉しい話は近頃あまり見かけない!
しかし、少しばかり、ケチを付けるなら、ファーストシーンでのナレーションが説明セリフ的に長く続いて、これは予告編で観ていたので、予告編の説明用のナレーションだと思っていたが、本篇中の正式なナレーションだと解り少し驚いた・・・それと15年もサーフィンもしないで、仕事一筋で、妻の浮気にも気付かなかったと言う弁護士のマットが仕事を沢山やっている様に見えなかったところが少しだけ残念だ。いつも書類のチェックは欠かさずやっている様だったが、その辺がやたらと気になってしまった。他は文句無く素晴らしかったな!
J・クルーニー演じるマット・キングは妻のエリザベスが突然の事故に遭い、彼女の元気な頃からの希望通りに、コーマから目覚めない時は、生命維持装置は撤去する事を希望していた事から、その決断を家族全員に伝える事になると言う難しい役処である。そこへもってきて、その妻が自分の気付かないところで、浮気をしていた事を、事も有ろうに、
長女から聞かされる羽目になる。踏んだり蹴ったりの、男の面子マル潰れのマットの悲痛な物語は、ここまで来ると笑うしか無いと言う心境になるのではないだろうかと思えるシーンも、多々有り、ちょっと滑稽な場面も上手く演出されていて真実味タップリだ。
家族皆が、エリザベスの為に尊厳死を選ぶ事を受け入れなくてはならない事になる。
家族や親類は気持ちの整理が出来ないままに、最期を見取る選択を嫌でも、早々に迫られるのだが、夫のマット、長女のアレクサンドラ、そして次女のスコッティ、エリザベスの友人達や、実の両親など、皆各々の立場で、同じ一人の家族を失うのであってもその気持ちはみなそれぞれ、複雑に違うものだから、その一人一人の家族の気持ちを家族愛と一言では言い表せない相違点をこの映画は丁寧に紡いでいくそのプロセスが素晴らしいし、その同じ人を失う事で悲しみを分かち合う事で離れていた家族の距離が少しずつ縮まっていくそのプロセスが感動的なのだ!!
人間にとって一番大切なものは、きっと人を許すと言う事だろうし、人ばかりか自分も許すと言うプロセスこそ、人間が生きて行く上で最も要不可欠な愛情と価値観だろうと、この映画を通じて強く感じた。そして、長女の彼氏のシドを家族の様に受け入れる様になるマットも素晴らしい。そしてこの小生意気なシドが実は苦労人だった事が判明するが、これも人を簡単にジャッジしない事の大切さを伝える素晴らしいエピソードだった!!