「かっこ悪いクルーニーが最高!」ファミリー・ツリー DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
かっこ悪いクルーニーが最高!
映画 「ファミリーツリー」、原題「THE DESCENDANTS」(子孫、末裔)を観た。2007年に出版された、カウイ ハートへミングの小説「THE DESCENDANTS」の映画化。
監督:アレクサンダー ペイン
キャスト
マット キング:ジョージ クルーニー
長女アレックス:シャイレーン ウッドリイ
次女アメラ :アマラ ミラー
ストーリーは
弁護士で、大土地所有者のマット キングは、ハワイのオアフ島で妻と二人の娘達と暮らしていた。代々、受け継がれてきた広大な土地を、大規模リゾート地として開発する計画を持っている。ハワイ島の各地に住む親類、縁者、従兄弟達すべてを巻き込んだ 大規模な開発事業計画だ。
ところが妻のエリザベスが、スピードボートに乗っていて転落し、頭を打ったために、昏睡脳死状態に陥ってしまった。目を覚まさない妻を見守りながら、マット キングは、仕事に熱中していて、妻と会話を何ヶ月も交わしていなかったことを反省する。自分は、家庭を全く顧みていなかった。妻が目を覚ましたら、妻のために今度こそ二人で世界旅行をしたり、妻の望みを何でもかなえてやろう、妻のために生き直そう と心に誓う。
ところがある日、医師から妻は回復する見込みはない、と断言され、自動呼吸装置を切る為のサインを求められて、マットはあわてる。まず、私立高校の寮で生活をしている長女アレックスを、家に呼び戻さなければならない。
マットは、10歳になる次女のアマラと一緒に、アレックスを迎えに行った。父親として、アレックスとまともに話をしたのは どれほど昔のことだったか。むつかしい年頃の娘と共通の会話を持てない父親が、母親の呼吸装置を止める為の同意を 長女に求める。しかし、父親にいらだつアレックスは 腹立ち紛れに 母親が父のことを愛してなどおらず、浮気をしていたと告げる。動転したのはマットだ。
腹を立てるにも 妻の浮気相手が誰か わからない。妻と親しかった友人に問い正し、浮気相手の名前がわかる。しかも、よりにもよって、エリザベスは その男を愛していて離婚をしようとしていたと言うのだ。マットは 大いにあわてふためく。
マットは親類縁者、友人達を招待して妻の呼吸自動装置を切ることを告げる。皆、それぞれエリザベスにお別れを言って 去っていく。妻から機械は取り外された。しかし、しばらくは小康状態が続く。マットは、妻がそんなに愛していたなら、妻の相手の男も、お別れを言いたいのではないかと考える。
相手探しが始まった。
長女アレックスのうろ覚えの記憶をたどって、相手の居所がわかった。彼はマットたちが いま取り掛かろとしていたマットの土地リゾート開発の計画に関わっている不動産業者だった。
ついに突き止めた男の家を訪ねていくと、男は必死で逃げ腰になって弁解する。マットには 男がエリザベスとはパーテイーで出会い 行き掛かりで関係を持ったが 彼には妻も子供達もいることがわかった。エリザベスは、男に妻子があることも知らなかったのだ。
マットに事情がわかってみると いま息を引き取ろうとしている妻に憎しみの感情は消え去り、自分が妻を放っておいたため妻子ある男の夢中になった妻に哀れみを覚える。そして自責の念にかられて妻を抱きしめて、息を引き取る妻を見守る。
妻の灰を海に返した日、親族達にマットは、土地のリゾート開発計画はなかったことにする、しばらくは妻の土地は手をつけずに置く と発表する。妻のことがあって、ふたりの娘達との離れていた間柄を縮めることができた。
マットにそれ以上、何を望むことが出来よう。
というお話。
コメデイータッチの家庭劇。
小品だが ジョージ クルーニーが、とても良くて 心に残る映画になった。主役が、クルーニーでなくて、他の役者がやっていたら全然ちがう映画になっていただろう。映画には、ものすごく悪い奴が一人も出てこない。家庭劇とは、そんなものかもしれない。
ジョージ クルーニーの妻の不実を知らされたときの あわてぶりが良い。人の善良、誠実の代表みたいな男が あわてふためく様子に同情と憐憫が集まる。肩を落としたクルーニーの後姿で、彼は全世界の女性を味方にしてしまった。かっこう悪い役なのに、クルーニーがやるとスマートでかっこうが良い。
音楽が良い。ジョージ クルーニーが間の抜けた夫を演じ、これまた間の抜けたようなウクレレとハワイアンが流れる。美しい海や自然をバックに、のんびりとしたハワイアンミュージックが流れてきて 心が癒される。