「男のみっともなさを真正面から描ける監督!」ファミリー・ツリー 瑞さんの映画レビュー(感想・評価)
男のみっともなさを真正面から描ける監督!
「アバウト・シュミット」では定年退職した父親を、「サイドウェイ」では今一歩踏み出せない中年男を描いてきたアレクサンダー・ペイン監督が、今度は妻に不倫された父親を描いてみせた。おろおろして、どうしていいかわからない、かっこ悪いおとうさんだ。それをハリウッドの伊達男ジョージ・クルーニーが演じているところがおもしろい。残念ながら、アカデミー賞は逃したが、こんな父親役を演じる年になったのかとしみじみ思った。前2作はロード・ムービーだったので、今作もそうなのかなと思ったら、ロード部分は少なくて、娘二人との格闘の部分が多かった。どの作品も観ている間は「あ~ぁ、しょうもないなぁ」と思うのに、観終わった後は時間が経つにつれ、どんどん心に沁みこんでくるのが不思議だ。「仕方ないよな」とか「そういう事もある」と思えてきて、監督の主人公に対する暖かい気持ちがスクリーンのこちら側にも伝わってくるからだ。そう、監督の作品は後から効いてくる。私が特に気に入ったシーンは3か所ある。マットが妻が不倫していたことを知って、友だちの家に駆け込むシーン。動揺が伝わってきた。昏睡状態の妻に文句を言うシーン。言わずにはいられない気持ちがわかった。3人でビデオを観ているシーンだ。再生された家族がそこにあった。よかったと思った。この映画も後から来そうだ。
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