劇場公開日 2012年11月17日

「勝手に考察」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0勝手に考察

2019年8月15日
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「魂=記憶」「わたしがわたしであること」「わたしがわたしたちであること」の意義を、わたしたちは太古の昔からの遺伝や記憶という視点から考え直す必要があるのかもしれない。

母親からのみ受け継ぐ ミトコンドリアを持った人類の共通祖先を「ミトコンドリアイブ」、父親からのみ受け継ぐY染色体を持った人類の共通祖先を「Y染色体アダム」と呼ぶ。エヴァの世界におけるリリスとアダムではないか。

われわれは精子と卵子の合体、すなわち受精によって誕生する。このとき、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子を1セットずつ受け継ぐことになる。これが核DNAの遺伝法則であり、大原則だ。つまりメンデル遺伝だ。

ところが、ミトコンドリアの遺伝子は母親からの遺伝子しか継承しない。これが母系遺伝なのである。何故か精子のミトコンドリアDNAは受け継がれない。メンデルの法則を無視してしまう。何故こんなことがおこるのか。何故、ミトコンドリアは父親の精子のミトコンドリアDNAを消してしまう仕掛け(アポトーシス)をもつのか。
母系遺伝の系譜。恐るべき「母性の起源」であろう。

「核」とは別のところにあるミトコンドリア。核DNAとミトコンドリアDNAは別物なのだ。核は何をしているかというと、生物のマスタープランのための設計図を収録したDNAを厳重に保管する金庫のような役目をはたす。

そして、生命の一番の特徴は「膜」(ATフィールド)。半透過性の膜があるからこそ、内側と外側(自分と他者)が両立できるし、膜があるからこそ情報(栄養物・刺激)が出入りするわけだ。

弱い者たちが寄り集まって危険回避をするという行動原理として、又は親密なコミュニケーションを深めるパターンとして、ATフィールドは芽生え、維持されてきた。人類の遺伝子の働きのようなものとして、インストールされているのではないか。
遺伝子のふるまいのどこかに「同一の魂の起源」があるとみなせる。

つまるところ、核を持つ者にとって、ひとりぼっちになるのは寂しすぎるということだ。わたしたち使徒の宿命である。

ところが、リリスのミトコンドリア的愛は少し違う。子どもが無事に親離れして、立派に自分の人生を獲得したことを見届けると、そっと姿を消し、ひとりぼっちになることを恐れない。
そもそも女の性は、男の性と違って快楽のための媒介を必要としないのだ。全ては女の内にある。女は他者を所有したり支配する必要がない。
ミトコンドリアDNAが父のDNAを徹底的に削除する理由がわかるような気がする。

ゲンドウの身勝手さに比べると、なんと尊いユイの愛だろう。
だからエヴァンゲリオンは、50歳をとうに過ぎたおばさんにもグッとくるのだ。

そもそもユイはリリスのミトコンドリアDNAを引き継ぐ神聖な女性で、シンジはユイのミトコンドリアDNAを受け継いでいる。そしてセカンドインパクトの際に採取したアダムY染色体とユイの卵子が受精した神の子。そもそも「人ならざる者」。神と人の媒介者(キリスト)である。
キリストは苦悩し、復活した後も迫害される。仮死状況から目覚めたイエスは天に昇天したのではなく、エルサレムから追放された。

シンジのクローンが14歳になるのを待って、シンジの記憶がサルベージされたところから本作は始まる。ニアサードで既に人ではなくなっていたシンジにミサトは問う。「碇シンジくんでいいのよね?」

相変わらずひとりぼっちになるのを恐れるシンジは、バカシンジを通り越してガキシンジ。アスカは、まず周りのことを考える立派な大人になっていた。

だからと言って、シンジの精神が自我に目覚めると覚醒しちゃってインパクトが起きるのだから、いや本当にお気の毒だ。どうもシンジの記憶は操作されているよね。

妄想的考察はキリがないからやめておく。

魅力的なチルドレンたちが、今度は精神崩壊ではなく、自我に目覚め自分の人生を取り戻してくれますように!
新作でむせび泣く準備はできている!

Raspberry