「少女と大人の間の葛藤、しかし美しすぎる…」ヴィオレッタ もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
少女と大人の間の葛藤、しかし美しすぎる…
娘のヌードを出版し、物議をかもした(ということがあったらしい)写真集のモデルであるエバ・イオネスコが自らの体験を映画化したものということです。
内容的には
ヴィオレッタは優しくヴィオレッタのことをいつも考えている祖母に育てられたごくごく普通の女の子。ただ、彼女の母親は普段家にはおらず、母親をいつも恋しく思っている。いや、本当に最初のほうのシーンのお母さんが戻るたびにうれしそうな顔をしたり、もどらない母に「10数えたらかえってくるよ」といって祖母と10数え始めるシーンなんて、本当にかわいらしくって、でも物悲しいものがありますね。
そんな母のアンナは芸術家肌で、知り合いの芸術家にカメラをもらい、愛する娘を被写体に写真を撮り始める。その写真はアンナの世界感たっぷりで、今で言うゴシックロリータのような黒い世界感。ヴィオレッタも戸惑いながらも、唯一母親と一緒にいられる時間を望み、あどけない姿で母の指示に従って写真を取られていく。
徐々にアンナの要求がエスカレートしていき、ヌードを撮るようになり、その少女のヌードとヴィオレッタの美しさが世のアートとして認められるようになり、アンナはさらに作品をエスカレートさせていく。
いや、世のというものの、一般世間はそれをよしとはせず、ヴィオレッタは一躍時の人となり、同級生にも先生にも異端児扱い…ヴィオレッタ自身もモデルの仕事との葛藤と大人の世界を経験する中で、徐々に服装やメイクも変わっていき、ほかの「子供」とは違い、スリップドレスに赤いルージュで学校に行くようになる。ヴィオレッタはすでに、「普通の子供」ではなくなり、言葉づかいもかわり、落ちていくさまがとっても顕著。
でも、そのステップもとてもわかりやすく段階的で、アンナがカメラをもらった芸術家と親密そうにしているのをみて、芸術家の絵を無茶苦茶にしたり、その彼が他の女性と結婚をしてショックを受けているのをみて、「彼女でもないくせに」と悪態をついたりと、母に愛してもらいたいけど愛されない葛藤みたいのが爆発、徐々に母との確執がエスカレートしていく様子がとても痛々しい。
世間の子供としての生活を送れないこと、母の愛情を受けられないこと、母が自分をモデルとしてしか扱わないこと、ヴィオレッタは徐々に葛藤が大きくなり母と衝突を繰り返す。
というお話。
大人になりきれず、少女にもなれず…その葛藤はおそらくアンナにもあったのかな。話の終盤にでてきますが、アンナの衝撃的な事実をつけて考えても、なぜアンナが母を嫌うような言動をとり、世の中に認められるためにわが子のヌードを撮るのかがわかる気がします。アンナもまた自分の世界から抜け出すことができず、少女のまま大人になりきれず、親になりきれなかったのでしょう。
ヴィオレッタを学校でレースのドレスに着替えさえるシーンや、シドとの撮影において、娘にキスをしたり、ヌードになったりを要求するシーンはもはや娘のことを考えているとは思えず、自己実現に必死…
と、ストーリーとともに雑記になってしまいましたが、この映画…アナマリア・バルトロメイが美しすぎる!!それはアンナだって被写体にしたくなりますわ。母が自分に求めることに戸惑いながら母と一緒にいたい一心で写真をとられるときの複雑でアンニュイな表情も笑っている表情もすべてが美しすぎる。個人的には、最後のシーン(施設かな?)でショートカットになったバルトロメイが最高にかわいかったです。毒のある世界観は別として、フレンチロリータな衣装やグラムロックな衣装も含めて、母のつくる「完璧」な世界観も大きな見所です。大人になれない母と娘の確執と葛藤を、華やかすぎる演出を交えて描いた世界は、もう一方でとても素晴らしかったです。
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