「健さんへ。」あなたへ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
健さんへ。
「このヒトって、映画俳優、だよね?」
友人にそう云われてハッと気付いた。あーそうか。そうなんだ。
高倉健という存在は映画スターという存在以外の何物でもない。
歌を唄って詩を書いてブログをやって(これはやってるらしいが^^;)
舞台にもTVドラマにも出ているマルチタレントとはワケが違う。
健さんは本当の映画俳優、映画スターなんである。
どこでそれを感じることができるか。
私世代のような若輩者は、健さんのリアル壮生期を観てきていない。
彼の佇まいも台詞回しも、例えばあのCMの「不器用ですから…」が
板についてからは"ああいう芸風"の役者さんなんだと思っている人も
少なくないと思う。
ちなみに彼は、不器用どころかエラく器用なのらしいが^^;
今作で初めて高倉健を観た人(?)がどれだけいるかは分からないが、
極端に少ない台詞や動き、乏しいともいえる感情表現以外で(失礼)
圧倒的にこの人の持つ魅力に気付かされるのが、その「佇まい」だ。
御歳80歳を超えて、この立ち姿の素晴らしさ。
港町で、市場で、刑務所で、お土産屋で、食堂で、旅館で、車外で、
高倉健という、彼そのものが映画を構築していると言ってもいいくらい、
何処にいても何をいっても彼が映画(絵)になっているのだ。
何十秒も黙っているのに、観客に一秒たりとも視線を外させない俳優、
台詞の合間、合い間、に余韻を残しては、主人公の心情を正に伝える。
こんな風情を醸し出せる俳優が(名優といわれる中でも)いるだろうか。
いわゆる演技派で売る人ではないが(ホントすいません正直で)
そこにいるだけで「映画俳優」って凄いことだ、とただ思うのみである。
母親が彼の大ファン(私の親世代はもの凄く多いと思う)で、
そりゃもう、早速、付き合うことを余儀なくされた^^;観るつもりでは
いたけれど、これは時期を誤ると大変なことになったのだと後で知る。
公開間もなく観に行った私達は(満席とはいえ)まだ余裕があった。
それが大変、週が明けたら劇場チケット売り場は大混乱と化した(爆)
あっちこっちで罵声が飛ぶ。オバちゃんオジちゃん大騒ぎで押せ押せ
状態行列、「どうして観れないの?」「何で満席?」「駐車券出してよ!」と
もう~^^;劇場スタッフの皆さんが気の毒なくらいスゴイ有様だった。
もちろん今作以外の作品を観にきたお客さんからは「何で買えないんだ?」
(順番待ちになるもんね)…健さん、この騒ぎをご存じでしたか?^^;
さて肝心のお話の方(爆)は、至ってシンプル。
妻を亡くした刑務官が妻の遺言(海に散骨)に従い、長崎まで旅をする話。
道中で様々な人間達と出逢い関わっていくという、ロードムービーである。
その出逢う人々も豪華すぎるほど豪華で、チョイ役でカメオのように出演
する人もいる。みんな健さんが好きなのねぇ~。
受け身の立場で彼らの世話を焼いていた健さんが、妻の真実に目覚めた後、
重要な進言を、とある人間に残す…という、粋な設定。
緩急鋭いわけでもなく、淡々と物語は進行し、健さんの衣装すら変わらない。
せめて健さん、旅館では帽子と上着を脱いで欲しかったけどなぁ~^^;
景色の素晴らしさと健さんの佇まいの素晴らしさを味わえ、
あ~映画って(映画俳優って)こういうものだったよね、、、昔は。と、
改めて思い返す意味での秀作。高倉健は日本映画界の宝だと賞賛する。
(イーストウッド卿と並んで長生きして欲しい御人。明日の映画界のために)