「作品としての描き方が良い」灼熱の魂 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
作品としての描き方が良い
主人公の女性(母)が、プールで見た偶然の再会によって、彼女の双子の姉弟が冒険することになる。
主人公はかつて自分自身に起きた数々の不幸と困難を乗り越えながら、どう受け取れば良いのかわからない子供を授かった。
彼女にとってかけがえのない子供は、同時に暗い過去を彷彿とさせるのだ。
これが姉弟がか今まで感じ取ってきた母に対する嫌悪感だった。
母の死後、公証役場の管理者が遺言状を手渡すが、それは、兄と父とを探せというものだった。
そして二人にそれぞれ手紙を渡せという。
母の軌跡をたどりながら、姉と弟はそれぞれを探し続ける。
同時に、当時の母の出来事がスイッチして描かれる。
映画の背景にあるのが、宗教的敵対と民族的敵対だ。
殺し殺され… それがずっと続く社会だ。
その中で主人公は夫を殺され、生まれてきた子供を孤児院へ出され、自分も村を追放されるのだ。
この敵対する構図は作品に色濃く描かれる。
その根底には「許せない」という言葉が渦巻いている。
最後に、母がプールで「それ」見たとき、そのすべての出来事が一つに繋がったことで、
そこに憎むべき人間などどこにもいなかったことに気付かされるのだ。
「憎むべきものなどどこにもない」と悟ったとき、
この精神を、心から愛する最初の息子と、今の姉弟の父と、そしてようやく二人の子供を心から愛せた理由を、二人の子どもたちにどうしても伝えたかったのだ。
人類史の中で今も繰り広げられているこの社会問題に終止符を打てという監督の意志が伝わる類い稀な作品だった。
コメントする