劇場公開日 2012年2月25日

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「極上の色彩と引き換えの、息を呑む表現」Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち snowiecanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0極上の色彩と引き換えの、息を呑む表現

2012年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

実に美しい映画です。
3Dで見ると、トレイラーの映像が伝えられる魅力がほんの僅かに過ぎないと解ります。ぜひ劇場で「体験」なさってください。「なんであんなことをするんだろう」なんて解釈をぬきに、見ることをおすすめします。そのほうが断然楽しめます。

以下蛇足。
ダンス、というより、作品内でもあるように別の「身体言語」、言葉で解釈するようなものでもないので、ここで「言葉で」レビューすること自体無粋な事かもしれません。3Dでなくてはならなかった、というウェンダースのコメントにあるように、人物の距離−空間を立体的に見せることで、pinaの空間を追体験できるようになっています。ドキュメンタリーと言うより、美術館で観賞するような映像作品に近く、あたらしい映像表現という言葉以外に思い当たるものがありません。
言葉は過剰にして不足。この体験は言葉では説明できません。百聞は一見に如かず、ということで、芸術とは何ぞやなんて考えずにまずは劇場へ行かれることをおすすめします。

ウェンダースの映画は昔からずっと好きで、劇場に足を運ぶことも多いのですが、写真家として展覧会をするほどに、芸術的なウェンダースの映像美−色彩−が、皮肉にも3Dメガネのフィルターで殺されてしまったことが非常に残念でなりません。上映中何度かメガネを外してみて見ると、かなり彩度の高い色だったので、ウェンダースもそのへん計算して映像を作っているのかな、と思いましたが。それにしても惜しい。木漏れ日の光とか緑とかもうがっかりです(涙)。完全自然色の3Dメガネがあればいいのに。

何かを手に入れるためには、何かを手放さなくてはならない。そんなことまで考えさせられる作品でした。そしてできれば「印象」のチェック項目に「美しい」も入れておいてもらえると嬉しいです。

snowiecan