「同じ人間であると知ること。」ヘルプ 心がつなぐストーリー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
同じ人間であると知ること。
ベストセラーの映画化だそうだが、実話だとしても少しもおかしくない話。
笑いながらも考えさせられる良い映画でした。
ま、明るい面に関しては他のレビュアーさんに譲るとして、ここではカタい話を(笑)。
この作品については、
「人種差別という重いテーマをライトに描き過ぎ」と言う意見を色んな所で耳にした。
が、ぶっちゃけて言わせてもらえばそういう重い映画は過去にいくらでもある訳で、
むしろこの映画の強みはその間口の広さにあると思う。
それに直接的な描写こそ無いにせよ、この映画は重い部分を省略などしていないし、
そんな描写が無くても哀しみをこちらへ伝える術を備えている。
「人種差別とフェミニズムとでは重みが違う。同列で扱うべきでは無い」と言う向きもあった。
一理あるとは思うが、
“いち人間である事の権利を否定される”という意味では両者は共通している訳で、
だからこそあの主人公たちには互いの痛みを理解できるだけの余地があったんじゃないかしら。
思うに、この映画は“人種差別”という決まり文句で問題をくくらず、
もっと広い視野から人間としての共通点を探っているようだ。
ミニマムな視点で。
無邪気な子どものように、慣習に囚われない視点で。
主人公スキーターが黒人メイド達の声を綴ろうと思い立ったのは、
歴史や道徳の授業で「人種差別反対!」と習ったからではなかった。
彼女の動機はもっと単純だ。即ち、
「自分に愛情を注いでくれた人が、どうして不当な仕打ちを受けなければならなかったのか?」
という怒りだ。
もうひとつの怒り。
「朝起きたら自分に言い聞かせなさい。『今日私は、あのバカ共の言葉を信じるのか?』」
コンスタンティンがスキーターに送ったあの助言は
恐らく彼女自身が実践していた事なんだろう。
彼女はその誇り高い言葉を、憎き白人の子に託した。
白人とはいえ、無垢な子どもに罪は無いし、
自分を慕ってくれる彼女を大切に想っていたに違いない。
人をいとおしく想う気持ち。
いとおしい人を失う痛み。
あ、それと、美味しいフライドチキンにかぶりつく時の幸福感。
そういう感情って、肌の色もヘッタクレも関係無いんよ、きっと。
悪役ヒリーの造形はややステレオタイプかと思うし、
あとパイのネタ引っ張り過ぎじゃない?とも思うが(笑)、
後ろ向きになりがちなテーマを前向きに描いた、
広くて優しい心を持つ映画だと思う。
<2012/4/8鑑賞>