「映像の美しさが、より心の闇の暗さを浮き彫りにする」ヘルプ 心がつなぐストーリー Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
映像の美しさが、より心の闇の暗さを浮き彫りにする
この映画の主人公ユージニアはコンスタンティンと言う黒人メイドに育てられた。そして彼女は自分の幼少期の体験の記憶を、今も良き思い出として、コンスタンティンとの友情をとても大切にしているのだ。
当時の米国南部の文化としては、有る程度豊かな生活を送れる白人家庭では、皆ベビーシッターの黒人を抱えているのが普通の事なのだろう。しかし、私の日本人の感覚から言うならば、自分の最愛の大切な子供の世話を、何故自分が最も差別している嫌いな、軽蔑する黒人メイドと言う存在に、南部に住む若い白人家庭の主婦達は、実子の世話をさせるのか?理解に苦しむのだ。そして自分の子供の世話をしてくれる人に対して感謝の気持ちも、敬意も持てない人間って一体どーなの?と疑問視したくなるのだが、自分も同じ様に黒人の世話になって、育った記憶があるのなら、何故ユージニアの様な行動を普通の人はする事が出来ないのだろうか?きっと今と比べるとアメリカってかなり保守的だったのかも知れない(特に南部アメリカに於いては)と考えられるのだ。
一方、黒人は低賃金でも我慢してキツイ仕事を続けなければ、生活が成り立たないのが、今から50年程前のこの映画の舞台になっているアメリカ南部に於けるアフリカ系アメリカ人達の事情らしい。現在も平均するとどれ位白人に比べて黒人の仕事が不利な状況で有るのかは、容易に数値化出来ないが、日本で言う所の3K的な仕事の求人が多い事は確かだろうし、黒人大統領が誕生した今日でさえも、今直冷遇されている事は確かな事だろう。
人間の心の底に潜む差別意識と言うものを撤廃する事は、口で言う程に、中々容易には出来ないものだ。
つまり、この映画は人間が生きる過程で、何を大切にして、日々暮してゆくべきか、人として豊かな人生の暮らしを得るとは、どう言う事かを問うているのだと思う。
そればかりでなく、また、自分の信念を貫いて生きる勇気と誇りを持つ事、親子の愛情にしても、友人との友情にしても、他者と心を通わせる事は、時間に任せて、只黙っていたら、勝手に育つと言う訳でも無いし、血縁関係の有無によるものでも無い事を教えてくれるのだ。
人間は、決して一人では生きられないのだが、他者との付き合いにおいて、人間関係の大切さや、理解を深め合う事を解っているようでいても、案外そんな基本的な心の思いを、自分の廻りの人間に対しても、優しさや友情溢れるお付き合いを継続して生活して行く事は、案外と難しく、自分本位になり、上手く他者との関わり合いが出来ないものだ。その自己の弱さを克服し、現実に生活で、根気良く仲間を愛していくならば、必ず友情を育む事はユージニアとエイビリーンの二人の様に出来ると、教えてくれるのだ。
人として人間が一番大切にしなければならない事とは、人間の善なる側面を信じて、行動をする勇気も持って生きる事。共に進んで、誰かを愛して、信じて生きるなら、そこに無限の力が生れるのだと信じて、行動を日々実行するならば、道は必ず開けてゆく事も教えてくれる愛と希望の物語だ。私達は、常に多様な価値観の中で、日々多くの人々と関わりを持ちながら生活をしている。ユージニアの様に生きる事が今最も必要だと考えるのだ。