「中学生の夏休み」エイリアン Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
中学生の夏休み
感想
1979年7月29日。同級生友人3人。かつて銀座1丁目に存在した、東京で唯一のスーパーシネラマシアター、テアトル東京で鑑賞。
これが、リドリースコット作品との最初の出会いとなる。
当時、自分は青春とも呼べる、多感な時期を迎えており、この映画からはなんとも言えない面白さと、強烈な印象を受けた。
独特なタイトルバックからはじまる、深宇宙空間。
遥か彼方に精製コンビナート建物群の塊のような飛翔体。カットが変わり、近くが投影されると超!巨大な宇宙船であることがわかる。
さらにその先端にカメラが迫っていき、誰もいない船内が投影される。突然、計器のスイッチが入り、人工冬眠から乗組員7人が目覚める。そこは地球ではなく、自動航行中に緊急救難信号を受けたAIコンピュータMOTHERが判断し、向ったある星系域であったー。
映画の序盤からすでに誰も助けに行く事ができない宇宙空間であり、とんでもない閉塞感が漂う船内の雰囲気。救難信号が発せられている惑星へ救難者を助けるべく、着陸を試みる乗組員たち。
そこで彼らの見たものとは?
全編を通して緊張感を高める音楽。映像を通して想像を絶するエイリアンの変態形態と極端な酸性体液などの驚くべき生態が徐々に判明。
そしてとうとう惨劇がー。
宇宙船という閉鎖空間内で展開する、息がつまる程の壮絶な死闘。
一度接触してしまうと取り返しのつかない、寄生生物。考えられる究極のリスク回避展開。意図的にミッションとして仕組まれていた事実も判明し、一気にラストまで見せていくスリリングな描写と驚きの展開!
本当、映画を観たその日は眠れず、数日後、エイリアンが夢に出てきたっ!あー、もーぅ、トラウマになってしまった。中学生の俺。
音楽は変幻自在の大映画音楽作曲者である、ジェリー・ゴールドスミス。場面で印象に残る楽曲多し。
特殊効果は、ジョージ・ルーカスからのILM創立とスターウォーズEP4の特殊効果撮影への参加依頼をジェリー・アンダーソンのスペース1999製作中の為に一旦は断ったブライアン・ジョンソン。
この年の米国アカデミー視覚効果賞を本作で受賞。翌年のスターウォーズ帝国の逆襲には、ILMと同列にクレジットされ、製作に参加している。着陸した惑星の不明瞭な世界観やノストロモ号の爆破、脱出等の撮影全般、起爆装置起動時の効果、蘭室シーン、当時、斬新であったスモークとレーザー光線の交差する視覚効果などHR・ギーガーの超絶な美術設定と相まって独特で印象的な映像を創り出す事に成功している。◎
素晴らしいアイデアが満載された脚本はスターウォーズEP4のCG制作等で名をはせる、サブカルぽい映像制作のパイオニア的存在であったダン・オバノン。宇宙船内の言い知れない閉塞感はダークスターの踏襲か。一世一代の強烈なインパクトを残す。本作の後にも先にも本人からは全く出てくる事のなかった、緻密に構成された原案と生涯最高の脚本であった。◎
監督は俺を映画の虜に変貌させてしまった、リドリー・スコット。監督が創り出す作品は、関心の焦点と話のベクトルがわかりやすく、毎作品ごとに起承転結、筋に納得するものが多く、映画として良質なものが多い。2年後、ブレードランナーを特殊効果撮影の神と呼ばれるダグラス・トランブルを迎えて制作。SF映画界と高校時代の俺に再び一石を投じることになる。
⭐️4.5