「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか? DT高校生とNTR吸血鬼、勝つのはどっちだっ!?」フライトナイト 恐怖の夜 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか? DT高校生とNTR吸血鬼、勝つのはどっちだっ!?
日常に潜むヴァンパイアの恐怖を描いたアクション・ホラー、リメイク版『フライトナイト』シリーズの第1作。
ラスベガス郊外の住宅街に住む高校生チャーリーは、学校一の美女エイミーをガールフレンドにするなど、青春を謳歌していた。
ある時、チャーリーは疎遠になっていたかつての親友エドから、この街にヴァンパイアが潜んでいる事を知らされる。当初は全く相手にしていなかったのだが、独自に捜査を進めていたエドが突如として失踪。彼の残した記録には、吸血鬼の正体が記されていた…。
チャーリーの隣人、ジェリー・ダンドリッジを演じるのは『マイノリティ・リポート』『モンスター上司』の、名優コリン・ファレル。
“ヴァンパイアの専門家“を自称するラスベガスのイリュージョニスト、ピーター・ヴィンセントを演じるのは『GO!GO!L.A.』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の、名優デヴィッド・テナント。
チャーリーの悪友、マークを演じるのは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『きみがくれた未来』のデイヴ・フランコ。
カルト的な人気を誇る(らしい)ホラー映画『フライトナイト』(1985)のリメイク版。こちらは未見。
失踪者が続出する住宅街、そしてそこに現れる異常にセクシーな吸血鬼。まるで「ジョジョ」の第3部と第4部をミックスしたかのような物語である。
この恐怖の舞台をラスベガスに設定したのが上手い。定住者が少ないので人が消えても誰も気に留めず、また夜間労働者が多いのでヴァンパイアが溶け込みやすい。もうこの設定を思い付いた時点で勝ち確です。
「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」とか言い出しそうなセクシーヴァンパイアを演じるのはコリン・ファレル。本作での彼の存在感がまぁ素晴らしい✨色気はあるが軽薄そうで、ハンサムなんだけどなんかキモいという、2枚目と3枚目の絶妙な狭間を奇跡的なバランスで演じ切っている。吸血鬼じゃなくてもこんな隣人が引っ越して来たら怖すぎるわっ!
例えばこれがブラッド・ピットだとカッコ良すぎるし、ニコラス・ケイジだとキモすぎる。ベン・アフレックだとちょっとバカそうだし、反対にクリスチャン・ベールだと知的過ぎる。やっぱりこれはコリン・ファレルしか考えられないわ。このキャスティングを思い付いた時点で勝ち確です。
“奥様は魔女“ならぬ“隣人は吸血鬼“という荒唐無稽な設定なので、やはりストーリーもコメディ色が強い。チャーリーのテンパりっぷりやインチキヴァンパイアハンターのヴィンセントの自堕落っぷりは笑いを誘う。
ただ、怖いシーンはちゃんと怖くしてあるのがこの映画の偉いところ。効果的にジャンプスケアを用いるなど、観客をダラけさせない様に工夫が施されている。
特にチャーリーがジェリーの家に侵入するシークエンスのスリルは一級品。ただでさえ秘密の監禁部屋の存在にビックリさせられるのに、その後瀕死のお姉さんを連れてジェリーに見つからない様に逃げ出さなくてはならないというスニーキングのドキドキ感が上乗せされる。そして「やっと逃げ出せた…ほっ」からのお姉さん粉粉シーンには、気が緩んでいたこともありついつい笑いが出るほどビックリさせられた。ここはマジ心臓の弱い人は要注意!危うく死にかけたわっ💀
家爆破からの逃走シークエンスはまさに「ジョジョ」。オートバイを投擲武器としてぶん投げてくるところなんて、こんなんもう殆どDIOやないか。突然全然関係ない人の車が突っ込んでくる所とか、おっウィルソン・フィリップス上院議員か?なんて全観客が思った事だろう…多分。
胸にセンチュリー21の立札看板をブッ刺されてぴょこぴょこ悶えるジェリーの滑稽さなども相まって、この真夜中のカーチェイスバトルの満足度は非常に高い。正直この後のラスベガスでのやり取りはちょっと冗長だったので、ここで映画を終わらせる事が出来ていれば本作はホラー映画史に名を残す大名作になっていたかも知れない。
クライマックスは、DT高校生がセクシー吸血鬼に彼女をNTRれ、嫉妬の炎(物理)で自分ごと吸血鬼を燃やしてしまうという超展開。一体何を観させられているんだ…?
結局のところ、これは初体験を吸血鬼に邪魔され、肉体的にも精神的にもボロボロに引きづり回された主人公が、ついには童貞を捨てるという物語であり、一貫して通過儀礼が描かれていると言えるのかも。つまり旧友との別れ、母性からの自立、新たな友の獲得、そして父権的な存在への対抗を持ってついには成人へと至るという過程がヴァンパイアホラーという形をとって表されているのだとすれば、このオチにも納得がいくというものなのかもしれない。
納得がいかないのは旧友エドと向かいに住むお姉さんの扱い。ヴィンセントの持つ聖遺物によって、エイミーやマークは吸血鬼の呪いから解き放たれた。それはまぁよかった。…が、エドとお姉さんはその前に死んじゃってんだよなぁ!
誰よりも早い段階で異常事態に気付き行動していたエドと、血を吸われている最中にも拘らずチャーリーの事を気遣っていたお姉さん。最も気高い人間性を見せつけてくれた2人が死に、エドが襲われるきっかけを作ったいじめっ子やお姉さんを「ストリッパー」と嘲笑ったガールフレンドが生き残るのは納得出来まへんっ!😠
なんやかんやであの2人もギリ助かっていたという描写を入れるか、いじめっ子たちは普通に死んでたという展開にするかしないと、なんかこう後味が良くないんすよねぇ…。監督、オタクに冷た過ぎるぞっ!!
興行収入的には振るわなかったようだし、評価もオリジナルほど高くない様だが、個人的には大変楽しめた。変態を演じさせるとピカイチだという、コリン・ファレルの新たな魅力に気付く事も出来たしね。
本作のコリファはまさにDIO。「ジョジョ」がハリウッド実写化される際には、彼にDIOを頼みたい♪
……やたらと画面手前に飛び出してくる炎や破片。3D全盛期の映画あるあるですねこれ。
今観ると凄く恥ずかしい演出だが、まぁそれも味だと思って飲み込むか。ほんと、あの時代の3Dブームってなんだったんだ?今誰もやってねーぞっ!!