「テーマやメッセージ性は素晴らしい、だけど…」モンスターズ・ユニバーシティ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマやメッセージ性は素晴らしい、だけど…
ピクサー発の大人気アニメ『モンスターズ・インク』のプリクエル。なんと12年ぶりの新作。
名門校『モンスターズ・ユニバーシティ』を舞台に、新入生であるマイクとサリーが巻き起こす騒動と、彼らが如何にして友情を育んでいったのかを描く。
前作から引き続き、ランドール役としてスティーヴ・ブシェミが声優として参加。
新キャラクターのハードスクラブル学長を演じたのは『ナショナル・トレジャー2』『レッド』の、オスカー、エミー賞、トニー賞の三冠王を達成、さらに世界三大映画祭全てで受賞経験のあるレジェンド中のレジェンド、デイム・ヘレン・ミレン,DBE。
初見。吹き替え版での視聴。
『モンスターズ・インク』の続編、かつ前日譚の物語だが、前作を観ていなくても十分楽しめる作品になっている。
どんなに努力をしても叶うことのない夢がある。
というシビアな現実を提示しつつ、それを踏まえた上でどう行動するべきなのか、を問うテーマ性は素晴らしい。
努力を怠る天才サリーと、努力と情熱を持ちながら才能を持ち合わせていないマイク。
彼らが反発し合いながら友情を築いていく様子は感動的。
特にモンスターズ・インクに忍び込み、スター達を眺めながらトレーディング・カードの説明文を声を合わせて暗読する場面は非常に良かった。
個性を磨けば必ず輝くことができるという前向きなメッセージと、個性の尊重を主張する道徳性は大変良いと思う。
ただ、この作品はアメリカの大学の文化であるフラタニティを大きく扱っているので、それに馴染みのない私は話にのめり込めなかった。
シナリオはわかりやすいのだが、面白さに欠けるところがある様に感じた。御都合主義的というか、単調というか。
クラブの仲間達も魅力に欠ける。それぞれの描写がおざなりすぎると思う。
話の肝である怖がらせ大会も、いまいち盛り上がらない。競技の内容が適当すぎないですかね…
決勝戦の展開は好きなのだが、競技者が弄ることができるところに調整レバーつけたらいかんでしょ。
あと、学長をいい人として描こうとしてるのか悪い人に描こうとしているのかが中途半端。
学長のエゴであの2人を学部から追放して、扉を封鎖して命の危機に晒し、結局退学させるけど、なんとなくいい人っぽく締めるという、非常にキャラクターがブレブレで魅力がない。
本作には明確なヴィランが居なかったというところもお話が退屈だった要因の一つだと思う。
決して悪い映画ではない。が、面白いかと言われると、うーん…と唸ってしまう様な作品でした。