モンスターズ・ユニバーシティ : 映画評論・批評
2013年7月2日更新
2013年7月6日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
モンスターたちの適性探しを描くウェルメイドな前日譚
「モンスターズ・インク」の続編が前日譚になると聞いたときは、ほっと胸を撫で下ろしたものだ。前作はストーリーが見事に完結しているから、どんな続きを描いても蛇足になってしまう。ならば、マイクとサリーの過去を描こうと発想を転換させたピクサーはさすがだと思う。しかも、「ナーズの復讐」などの学園映画のフォーマットをアニメに採用するアイデアも大胆不敵だ。
今回はモンスターズ大学を舞台に愉快なキャンパスライフが展開するのだが、その核にあるのは、自分の適性探しという真面目なテーマだ。前作を観た人なら、マイクが怖がらせ屋にならないことを知っている。でも、大学に入学したてのマイクは、そんなことを知らない。周囲の忠告や批判をものともせずに、マイクはひたすら努力を積み重ねていく。やがて理想と現実とのギャップに直面し、夢を打ち砕かれることになる。いまの若者はもちろん、かつて若者だった大人も共感できる要素がきちんと盛り込まれているのだ。
ただし、前作では新鮮だったモンスター世界には驚きがないし、ブーとサリーとの友情に匹敵するほどの感動もない。たしかによく出来ているけれど、前作のファンにとってみれば、この作品が存在しなくてはならない理由を見いだすことができないのだ。最近のピクサー作品は、どれも革新性や創造性が薄れてしまっているので、とっても気がかりだ。
(小西未来)