劇場公開日 2012年12月15日

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「原点回帰したティム・バートン」フランケンウィニー キューブさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5原点回帰したティム・バートン

2012年12月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

幸せ

 主人公のヴィクターは悲しみのあまり、愛犬を復活させてしまう。スパーキーが死ぬ前までがじっくりと描かれているから、観客はヴィクターに感情移入できる。なかなか寝付けないヴィクターが、生前のスパーキーを撮ったフィルムを見るシーンは涙を誘う。

 その後の展開はティム・バートンらしい。「子供向けなのに明らかに大人向け」なのだ。スパーキーを蘇らせるのに雷を使うことを思いついたヴィクターは早速行動に移す。自宅の屋根裏部屋に装置を作り、墓からスパーキーの亡骸を掘り起こす。そしてスパーキーの欠損部分を縫合し、雷に打たせる。「犬を愛する少年の健気な行動」といった風に描かれているが、こんなこと間違いなく狂気の沙汰だ。夜のペット墓地でのそのそとヴィクターが土を掘り返すときは、純粋だからこそゾッとする。

 ここからの展開が重要なので言わないでおくが、個々のキャラクターがどれも魅力的だ。まともなのは「狂気に走る」ヴィクターとその両親ぐらい。後の登場人物はどいつもこいつも陰気臭い奴かキ○ガイばかり。彩り豊かな人物たちの正確が白黒の映像とのコントラストで一層映える。

 ’50〜60年代のアメリカのようなノスタルジー溢れる町並みも良く作り込まれている。ただ全体的に「シザーハンズ」の路線を踏襲しすぎているきらいがある。町並みはもちろん、ストーリーの展開も大枠は同じだ。しかし決定的に違うのは「死んだものを生き返らせる」点。自分が心から愛していたものと死別したとき、どうするべきなのか。誰でももう一度会いたいとは思う。だがここから先は人間の領域を超えた話だ。ティム・バートンはこの究極の問題をシニカルなアニメーションに仕立て上げた。

 ここ最近、期待はずれの映画ばかりだったから、従来のティム・バートンに戻って嬉しい・・・はずが。実はこの映画最後の最後でご都合主義に走る。その直前は感動のあまり本当に泣きそうになったのだが、その後がいただけない。それまで主張してきたことがここで全て台無しになっているからだ。この点さえなければ完璧だったのに。

 とはいえ、ほとんどは皆が期待したとおりの世界だ。ティム・バートンらしく日本のサブカルへのオマージュに溢れているのも楽しい(ガメラ、ハローキティなど)。白黒なのに3Dが存分に生きているのも評価できる。それにスパーキーがあまりにもかわいいので、彼を見に行くだけでも十分価値はある。
(2012年12月23日鑑賞)

キューブ