「ハッピーエンドのシザーハンズ」フランケンウィニー 雨丘もびりさんの映画レビュー(感想・評価)
ハッピーエンドのシザーハンズ
父親にいやいや野球をやらされたのは、やっぱりバートン監督の実体験だそうですね。
【ハッピーエンドのシザーハンズ】
元となった30分短編映画も素晴らしいけど、このリメイクではさらに深くバートン監督テイストを味わえる。
もともとは、主人公の少年ヴィクターと遊んでいるさ中、庭を飛び出した愛犬スパーキーが車にひかれて・・・という始まりだったのに本作では違う。
父親から「家に籠って本ばかり読んでいるなんて不健康だ。男らしくない。少年野球チームに入団するなら、科学コンテストの参加費を出してやる」と言われ、仕方なく参加した試合の事故で、、、、という、バートンファンにはたまらない、とっても厭な経緯が盛り込まれている。
この事件がヴィクターを深く傷つけ、死体の蘇生に駆り立てる。伏線として見事に機能していて素晴らしい。
(事故現場をまったく描かずに、そうと分からせるのはバートンの上品さ)
リメイクにのみ登場する、科学教師のジクルスキ先生も良い味を出していて好きだなー。
スパーキーの蘇生は成功したが、友達のどーでもいーペットの死体では失敗する。悩むヴィクターに「代入する変数を間違えたな」と科学的にアドバイスする先生がとても良い。
科学は常に中立で、行使する人間によって善行にも悪業にもなる。初期SF作品っぽい訓告が小気味良く挟まれる。
ジクルスキ先生は、科学者としての才能を振り回しすぎたせいで、町の無学な人々から疎まれ、ついには街から追い出される。
この構造、まったく『シザーハンズ』と同じね。
エドワード=シザーハンズは社会的に抹殺されたが、スパーキーは受け入れられ生き延びる。
それは、不気味な容姿を持ちながら、無学な大衆の哀れみを誘い、愛されるように立ち振る舞ったから。
「フフッ、巧くやりなよ~」というバートン監督のウィンクみたいな映画。
彼は彼なりに、やっぱり世渡り上手。