ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター : 映画評論・批評
2011年8月30日更新
2011年9月9日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
エレキギターとはジミー・ペイジの笑顔のことである
ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、そしてジャック・ホワイトという3世代にわたるギタリストが集まって、ギターについて語り合う。もちろんどうしてこの3人でなければならなかったのかとか、今更何故とか、様々な疑問が湧くわけだが、そんなこちらの思いのすべてを、60歳をはるかに過ぎてなおギター小僧丸出しのジミーの笑顔が吹き飛ばしてくれるわけである。
エレキギターとはこの笑顔のことである。とか何とか思い切り大胆なことのひとつも言ってみたくなるような、爽やかで愛らしく、しかし憂いと悲しみを目いっぱい湛えた笑顔がそこにあったのだ。そこにエッジの少年時代の思い出が絡みつく。え? お金がなくてギターを作って弾いていただって? でも記憶の中のそれは、貧しいというより暮らしとともに音楽があることの豊かさに溢れている。世界でたったひとつの音が、そこでは響いていたはずなのだ。この時ばかりはギターを作ったこともない人生を送ってしまった不幸を、本気で悲しんでしまった。
そんなふたりの人生と音楽の豊かな繋がりを、最年少のホワイトが見つめる。視線の先にはブルースを生み出したアメリカとそのさらに先にあるアフリカの大地が広がっている。埃まみれのそこに、ジミー・ペイジの笑顔とエッジの手作りギターがあった。 ホワイトを通して見るギターの音の風景、と言ったらいいか。この音を体の中に詰め込んで、これからも生きて行こうと思った。
(樋口泰人)