「ラリーは周囲を変えていくようなことは何もしていない」幸せの教室 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
ラリーは周囲を変えていくようなことは何もしていない
トム・ハンクスが監督ということで興味を持ち鑑賞。
今作でトム・ハンクスが描きたかったのは、彼が演じるラリーと学生や女教師との交流を通じて、後ろ向きだった彼らを前向きに変えていくというものだと思う。だが、ストーリーはそのテーマを全く表現できていない。
まず、ラリーは周囲の登場人物を変えていくようなことを何もしていない。学生達とはスクーター乗り回して遊んでただけ。ジュリア・ロバーツ演じる女教師とは、彼女を自宅まで送り届け、よく分からないキスシーンが挿入されるだけで特に何も起こらない。
前述のテーマを表現したいのならば、例えば人生の先輩であるラリーが学生の悩みを解決するとか、ラリーのスピーチを受けて女教師が自分の人生について見つめ直すきっかけとなったとか、そういったエピソードがあるべきなのに何も無い。にもかかわらず、周囲を前向きに変えていきハッピーエンドという描かれ方をされている。そのためストーリーの根本的な部分の出来が悪い。
あと、全体的にリアリティに乏しい。ラリーは失業中なのに焦る様子が無い。スピーチの講義もただ学生にひたすら実演させるだけで、スピーチの技法の解説や学生達に対するフィードバックなど、講義らしいことはほとんど出てこない。だったら教師要らないよな。
以上の理由から残念な映画と言うしかない。トム・ハンクスほど数多くの作品で主演になった俳優でも、やはり監督や脚本は全然別の仕事だから中々難しかったのかも。
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