「バレたらどうなる? ラストは正に最高の“オチ”」ロボジー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
バレたらどうなる? ラストは正に最高の“オチ”
矢口史靖監督といえば、テーマの着眼点の面白さと、笑いを取りながらも事実を曲げない、ある意味、本物主義なオタッキーな作風で、今や矢口ブランドを確立。その新作は映画ファンとして楽しみのひとつだ。
今回は、工業技術の最先端、二足歩行ロボットが素材だ。ロボット作り未経験の素人チームが、ワンマン社長の号令で開発に臨むというのだから大変だ。まず、この無謀さが笑いを誘う。困った挙句に、展示会に出品するロボットに人間を入れようってんだから、これ以上の可笑しさはない。
と同時に、バレないのか? バレたらどうなる? というスリリングさを孕む。
要するにこの映画は、大筋を先にバラしたうえで話を進めるわけで、見どころは次の2つということになる。
1つ目は、中に入る人間が身体能力に勝る若者ではなく、明日にもボケようかという老人だということ。これは笑いだけでなく、ロボットの古ぼけた外観とともにペーソスを醸し出す。しかも人生経験豊かな爺さまは、やっと再就職口を見つけた恩もどこ吹く風、制御不能のロボットと化す。
今や日本中で話題のロボットとなった73歳の鈴木さん、心が離れぎみの家族や高齢者を取り巻く社会に対して自己アピールすることで、せめてもの老人の意地を見せる。その人間臭さが時に哀れであり、また、おちゃめで可愛くもある。
これはもうミーキー・カーチスこと五十嵐信次郎のワンマンショーといっていい。
若手の中でも独特な色を持ち、好きな役者でもある濱田岳と田畑智子だが、今回ばかりは影が薄いのも仕方あるまい。
もう1つの見どころは、いつバレるのかも含め、どこに落としどころを持っていくのか、この一点に尽きるだろう。話の大筋は分かって観に行くのだから、興味の殆どがラストの展開であり、矢口監督の手腕が最も活かされるのもここだ。
もちろんラストの顛末は伏せておくが、マジ?なロボット談議による誘い水といい、いくつかの伏線といい、これ以上の“オチ”はない。