人生はビギナーズのレビュー・感想・評価
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観る者の心に優しく触れる、愛おしい趣向の数々
決してコミカルで賑やかな映画ではない。むしろ人生の機微や繊細さに満ちた物語という形容がふさわしいだろう。中心となるのは、ゲイであることをカミングアウトした高齢の父。それを機にガンでありながら表情をより豊かなものへ変貌させていく姿には、誰もが一種の憧れを抱かずにいられないはずだ。そんな父の姿、家族の肖像を散りばめながら、本作は息子であるユアン・マクレガーの視点で展開していく。フラッシュバックする記憶。母の面影。一歩踏み出せずにいる自分・・・。愛犬の気持ちが字幕付きで表示され、仮装パーティーではフロイトに扮し、ヒロインは自分の意志をサイレントで表現するなど、愛らしい趣向が盛りだくさん。あらゆる瞬間が観る者の気持ちに優しく触れ、心をふっと軽くしてくれる。誰もがビギナーズ。前に踏み出す勇気さえあれば日常は変わる。何よりも本作そのものが、一度きりの人生を思いきり楽しんでいるように思えてならないのだ。
【自分の心に偽りなく生きる事の大切さを、描いた作品。名優クリストファー・プラマーと共に、フランス女優のメラニー・ロランの美しさに魅入られる作品でもある。】
ー マイク・ミルズ監督は、寡作で有名な方で、私は「20センチュリー・ウーマン」を劇場で見て、初めて知った監督である。
同じく、今作のヒロイン、メラニー・ロランも「イングロリアス・バスターズ」での映画館の娘と、「グランド・イリュージョン」「複製された男」「英雄は嘘がお好き」位しか見ていない。
けれども、今作はマイク・ミルズ監督自身の経験に基づいた脚本と、メラニー・ロランの美しさにヤラレタ作品である。(スマン、ユアン・マクレガー・・)-
◆感想
・イラストレーターのオリヴァー(ユアン・マクレガー)が、何処か虚無的で、厭世観を漂わせる生き方をしている事は、劇中で頻繁に描かれている。
それは、母ジョージアと父ハル(クリストファー・プラマー)の表面上は夫婦の体裁を取ってはいるが、冷えてしまっている夫婦関係をオリヴァー少年が、繊細な感性で見ていたことに起因する。
- 夫婦仲を、子供はキチンと見ているのである。巷間で良く言われる、夫婦仲が良い男女の間に生れた子供は、反抗期などを示しつつもキチンとした大人になって行くのである。-
・父ハルが、長年隠して来た、実は同性愛指向者であった事。そして、妻が亡くなった後、ハルは第4ステージの癌になりながらも、ゲイである事をカミングアウトし、若き恋人、アンディを得て楽しそうに過ごす姿を、名優クリストファー・プラマーが見事に演じている。
・物語は、父ハルが亡くなった後から時系列を行き来しつつ描かれる。父を失った喪失感を抱くオリヴァーの前に現れた、”口頭炎で口がきけない”アナ(メラニー・ロラン)。
二人は、お互いに似た者同士である事を察し、距離を縮めて行く。
ー この辺りの描き方が絶妙に巧い。そして、フランス女優のメラニー・ロランの美しさに魅られれる。-
<人生の最期を、自分の心に偽りなく生きる事を選択した、オリヴァーの父、ハル。その姿を批判する人は誰もいない・・。
その姿を見て、オリヴァーが、虚無的で、厭世観を漂わせる生き方を真に愛する女性アナと出会った事で、徐々に変容させていく姿を、ユアン・マクレガーが絶妙に演じている。
”生きる中で、何かが切っ掛けになり、それまでの生き方をリセットして、初心者として生を始めても、良いではないか!”と、マイク・ミルズ監督が観る側に語り掛ける作品である。>
■寡作のマイク・ミルズ監督の最新作「カモン カモン」が今春、公開される。実に楽しみである。
順調に第4ステージに進む父親のユーモア
父親ハルは自由に生きようと決心した。
花火が上がり、「ファーック!」と叫び、医者も仲間も呼んでパーティーで盛り上がる。
政治活動もスタートすれば宗教的随筆にも着手する。
こんなにも残りの時間で輝けるならぱ、余命告知を受けてロスタイムを知らされるのも悪くないと思えるね。
75歳の父親がゲイカミングしたことは、息子ユアン・マクレガーにとっては天地もひっくり返るほどの戸惑いだっただろう。
だけどね、
僕たちは老いていく自分の父親について今までどれほどの事を知っていただろうか、
(「LGBT 」はエピソードとしてはひとかけらに過ぎない)。
たくさん話してきただろうか、
根掘り葉掘り質問してきただろうか、
手をつないで一緒に散歩してきただろうか。
喧嘩はやったか?
きっと驚きの事実を僕たちは何にも知らない。
別れ間際になってさえ父の半生さえまともに知らなかった僕たちの不甲斐なさを、本作は教えてくれるんだ。
でも惨めではないクリストファー・プラマーの最期。
⇒「サウンドオブミュージック」以来の、背筋の伸びたトランプ大佐との50年ぶりの再会。子供の時以来の尊敬するおじ様に会えた感激に心がしびれた。
映画は、父親の死後の部屋の片付けと生前の回想が順ぐりに巡る。
不器用な父が息子を心配するセリフが所々に耳に残る。
すでに父親の記憶も曖昧になってきているところなどとても正直。
父親の死を悼んで新しい恋にも仕事にも乗り切れないそんなリアルなユアン・マクレガーに好感大だ。
そして思う、
父と自分の“満足できるやりきった別離“など誰にも持ち得ないだろうけれど、時間切れの悔しさは亡き人への愛の想いに比例するだろうことを。
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【関連する映画】
・「ブランク13」(斎藤工監督)で、葬儀の場で会葬者の口づてに父親を知るのも良いだろうが、せっかくなら、生きているのなら、父親に会いに行くべきだな。
・「オーケストラ!」で本人ユダヤ人出自のメラニー・ロランが根性ある役所を見せています。影を負ってどこか過去を秘めた表情は本作にも。
・「アーティスト」でパルムドッグ受賞のワンちゃんですか!?アーサーくん。
心にポッと灯る勇気をくれる静かな良作
ユアン・マクレガー
わたしはドルヲタだ。2日後に好きなアイドルのメンバーが1人卒業してしまう。そしておっとの好きなアーティスト(アイドルともいえる)の1人がつい昨日脱退したことを発表してしまった。彼女はわたしの推しでもあった。昨日は悲しいのに全然泣けなくて泣きたいのに泣けなくて、出てもちょちょ切れる程度だった。
朝を迎えてそんな心境とNetflixで今日までの配信ということもあり、マイリストから自然とこの作品を選んでいた。何年かぶりに2度目の鑑賞をした。ラストシーンを記憶違いしていたようだ。初めてみた時も泣いた気がするが今回も泣いてしまった。心が浄化された気がした。わたしの頭の中はクリーンな気持ちだ。もちろんまだ寂しくて悲しい気持ちがよぎることもあるけど、観る前とはだいぶ違う気がしてる。
主人公と主人公の出会う女性、そしてお互いの親、みんな不器用なんだけど不器用なりに成長しようとしてる姿に泣いてしまうのよね。パパも幸せそうなんだ。
ユアンのトランクス姿が忘れられない。
ちなみにお父さんがゲイである事をカミングアウトするけどそれは物語の伏線であってそれ自体が重要なことではないのでLGBTものだと思って観る人は注意してください。
楽に観れる映画
私も実は初めてなので
やさしい
雰囲気さいこう
20センチュリーウーマン観ようか悩んでて、それを決めるために観ました!
めちゃめちゃ雰囲気よくて、どのシーンにも価値があって、この監督たぶん合うと思った。
ただ、まあリアルではない。こんな人いるのか。オリバーもアナもいい人すぎない?優しいし暖かい気持ちを持ってる。だから観てて気持ちいいんだけど、人生ってそれだけじゃない。
その象徴として父のカミングアウトや、母の哀しみも描かれてそれにオリバーの人生が左右されてく様はすごく綺麗としか言いようがない筋書きで、人間の闇は薄かった。悪いことではないけど。
メアニーロラン。ハマるわ〜。グランドイリュージョン、イングロリアルバスターズで知ってはいたけど、本当に美しい。だけじゃなく、凛として男らしさもある。2人の出会いのシーンとかもう最高すぎた。なんだあれ。男の人にあれが描けるって凄い。差別ではないです。
初心者なんだ
少しじれったかったけど、雰囲気には好きな映画でした
いい映画だったなとは思いつつも、主人公のじれったさに終始もどかしさを感じた作品でもありました。
メラニー・ロランと言う極上の美女を前にしながら、一体何してんだか・・・(苦笑)
でもまあ彼の幼少期から過ごしてきた過程を丁寧に見せられると、そうなるのも妙に納得ではあったのですが。
ただ丁寧なんだけど、その世界観に入り込んだらまた違う時系列へな展開が繰り返されたこともあって、もう一歩感情移入できずなところは多分にありましたかね。
雰囲気的には好きな映画だったんですけどね、見せ方に関しては若干微妙だなと思ってしまった作品でした。
しかし劇中のように父にゲイだとカミングアウトされたら、どう言う心境に陥るのでしょうかねぇ・・・。
私は別にゲイに対してそれほど偏見はないと思っていましたが、自分にこの映画のシチュエーションを当てはめて考えたら、ショックどころではないかもしれません。
カミングアウトした方はスッキリ人生を謳歌できそうですが、された方は主人公のようにじれったい男になってしまうのも無理はないのかも。
しかも母が死んでからそう言われたら、両親は愛し合っていなかったのか、そしてその子供の自分って・・・と落ち込むこと間違いなしでしょうしね。
ただ本来ならゲイの父の姿はあまり見たくないものですが、あのクリストファー・プラマーの満面の笑顔を見せられたら、嬉しいと言うか羨ましいとさえ思えそうで、モヤモヤした感情はある程度吹き飛びそう!
クリストファー・プラマーはアカデミー賞も納得の演技でした。
一度しかない人生ですもんね、やっぱり人生は謳歌しないと損だなと教えられた作品でした、でもなかなか出来ないのもまた人生なんですけど・・・。
しかし主人公を演じたユアン・マクレガーは、じれったいけど母性本能をくすぐるような役が本当によく似合いますね。
相手役のメラニー・ロランも、不思議ちゃん的極上の美人役が物凄く嵌っていたと思いました。
ただメラニーが演じたアナのバックボーンがあまり語られていなかった分、感情移入度は薄めでしたけど。
それと犬のアーサーもナイス助演、犬と人間のそれぞれ一方通行な会話の見せ方が何とも絶妙でしたね。
人生はいくつになっても始められる、やり直せる、時系列の見せ方に問題はありましたが、基本的にはいい映画でしたねぇ。
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