「新旧アクション・ヒロイン女優の対決」スノーホワイト マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
新旧アクション・ヒロイン女優の対決
多少のアレンジはあるものの、素材は誰もが知っているグリム童話の『白雪姫』だ。一般的なこの物語と大きく違うのは、王女のスノーホワイトが甲冑をつけて自ら邪悪の魔女に立ち向かうことだ。
このスノーホワイトを若手のクリステン・スチュワート、魔女をシャーリーズ・セロンが演じる。シャーリーズ自身も「イーオン・フラックス」(05)でアクション・ヒロインを演じたことがあり、いわば新旧ヒロイン女優の一騎打ちが楽しみのひとつだ。
アクション女優の筆頭アンジェリーナ・ジョリーら、シャーリーズと同年代でアクションもこなせる代表的な女優に共通しているのは、アカデミー賞を取れるほどの演技派だということ。けれどもヒロインを演じる上でのスタイルは、男を手玉に取るほどの強さを持ちながら、まだまだ男の観客に媚びたところがある。つまりお色気路線から抜け切れていない。
対してクリステンに代表される最近のヒロイン像は、男の観客を意識せず肩に力が入っていない。自然体の演技で同性からも支持を得ているのが特徴だ。もちろん、こういう体制が出来上がるのにはアンジーやシャーリーズ、ジョヴォビッチやジョディ・フォスターといった面々がスクリーンで強い女性像を築いてきたからだ。
女性を主人公にしたアクション映画が多くのヒットを生み出し、ここにきて新たなヒロイン像が確立されつつあるのが最近の風潮だ。クリステンはその先頭に立つ存在と言っていい。
そうして観ると、クリステンとシャーリーズはお互いの持ち味を存分にぶつけ合っていて、ただのお伽話で終わらない見応えと面白さがある。
ほかの役者も贅沢だ。
とくに小人たちの顔ぶれがよく、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の“黒ひげ”ことイアン・マクシェーンや、「宇宙人ポール」などの作品で知られるコメディアンのニック・フロスト、「シャーロック・ホームズ」シリーズの警部などでアクの強い顔のエディ・マーサンなど、どこかで見たことがあるという役者が顔を揃えて楽しい。
「◯◯でも歌おうか」「口笛はやめとけ」のやり取りは吹き出す。
追放された神「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースは、残念ながら本作では存分な力を発揮したとはいえない。だが、クリス演じる名もなき狩人は本作のキーパーソン的存在であり、その価値は終盤で大きく取り上げられる。続編でのさらなる活躍に期待したい。
長年、幽閉されていたプリンセスがどうやってあのような身体能力を身につけたか? そんなことを考えたらダメだ。スノーホワイトは特別な能力の持ち主なのだ。そう思って観よう。